●ヤヌコヴィッチの仇ウチ
ウクライナがロシアのクビキを解き放ったオレンジ革命から、1年半も経っていない。倒したはずのヤヌコヴィッチ元首相の党がこの議会選挙で第一党に返り咲き、というか見事「仇ウチ」に打取りました。傍観者よりも少しは気が入っているわたしとしては嬉しくない結果だが、かといって憂える気持ちはさらさらない。
ユーシェンコがやり直し選挙で勝った時も、ヤヌコヴィッチの親ロシア票は半分近くあったのです。有権者の半分近くの忠実な支持者がいたのです。オレンジ派が割れた上に、見るべき成果どころか追放するべく腐敗官僚と汚職企業家は顔ぶれがちょっと替わって元の木阿弥という現実に、もっと批判票があってもいいくらいだ。
●美人を怒らせたタタリ?
ユーシェンコは当初、勢いをかって一気呵成に腐敗一掃に全力を上るべきところを、外遊や閣僚をいじり回している間にレイムダックになってしまった。オレンジ革命の盟友・Mrsティモシェンコ首相をクビしてからすっかり浮いてしまった。>美人を怒らせてはあとのタタリがこわい<と、あれは9月頃のコラムに書いた気がする。
東のロシア系住民を取り込もうともせず、ユーシェンコはあまりプラグマティックではない。理念も理想も志もある言葉には感銘するが、自慢し過ぎで何を喋っても笑える人間味がみつからないと飽きられる。だから浮いたまま飽きられたのだろう、彼の党「われらのウクライナ」はティモシェンコにも大敗した。
大敗の理由は、ユーシェンコが大統領は議会選挙にタッチしない高邁な姿勢から選挙運動しなかったためといわれるが、そりゃちがう。選挙運動に出ればヤジられてもっと悪くなるかもだ。では出しゃばり・Mrsティモシヘンコの「ティモシェンコ連合」がなぜ票をのばしたか? それが解らん、お人形美人のどこがいいのか解らん。ただこの女性、たいへんしたたかでオレンジ連立政権を組み、ユーシェンコのもとで首相になるつもり。『ウクライナ国家のため私的確執には目をつむる』。と目標がはっきりしていのとそのためには清濁合わせ呑む用意がある。
●いっそヤヌコヴィッチと連立を!
ま、それくらい現代の政治家ことごとく豹変できるので、ユーシェンコもそう。ヤヌコヴィッチはっもっと踏み込んで誰とでも連立ありよ、と文字通り豹変している。オレンジ与党の連立か、オレンジ与党とライトブルー野党の(ヤヌコヴィッチの党「ウクライナ地域」のシンボルカラー)連立になるか、個人的には後者が見たい。
ウクライナ16ヶ月の歩みはガッカリではあるが、それでも選挙や言論の自由、外国メディアの自由など、全体主義にはもどれない社会体制ができあがった。ヤヌコヴィッチの地盤はもはやユーシェンコに毒を盛った体質ではない。(了)