安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ビジネス語と文化語
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〈 Sat, 25 Mar 2006 〉


●フランス人ジャック・シラク
ジャック・シラクはフランス人でござる。フランスの体現者である。軽々に外国語を話さない。特に英語を好まない。シェイクスピアよりヴォルテールなのだ。アメリカはハーヴァード大学で勉強し、パリ政治学院卒のシラクさんはちゃんと英語が出来るのですが、話してるのは聞いたことないでしょ。あるとき国連で同時通訳がなく、横にいたブレア首相(仏語がわかる)に通訳しろといったほど、それくらい解らないフリが徹底している。

23日、EUサミット、シラクさんが出席している経済セッションの会場、欧州経営者連盟会長のセリエール氏が英語で演説を始めた。

さあ、たいへん!怒ったしラク大統領:『いったいぜんたいなぜ英語をつかうのか、母国語でやりなさい』。やんわり怒鳴りつけたら、このセリエール氏が応じた:"I'm going to speak in English because that is the language of business," 別紙ではもう少し応答を正確に『この種の特定会議は英語ですすめられ、今日のヨーロッパでビジネス言語として広く認められている』となっていました、念のため。

●言語と政治
シラクさんは奮然と退場、同席の財務大臣と外務大臣が追い従う。あとで、シラクさんはフランス語の文化について、アイデンティティーや世界が一国の言葉でリードされる危険性について一席ぶちました。英語とフランス語は認定国際語である。オリンピック、国連、EUにおいても然り……などなど。

フム、そうですね。だから、オリンピックでは開催国の言葉と英仏両国の言葉が公用語となり、フランス語ができなければIOC委員長には絶対なれない。ユーロヴィジョン・コンテストもそうですね、司会役はかならず英仏語と地元の3カ国語をつかう。国連だってそうだ。アナンはもちろん、歴代総長は一応フランス語もこなす。そう言う事実はしかし、なし崩しに消える運命にみえるのですが……。

つぎのセッションの演説では、欧州中央銀行総裁でフランス人のトリシェ氏が戻ってきたシラクさんを前に、いつもの英語スピーチから母国語フランス語にスイッチ。戦々恐々、おもしろいですね。

●最後のサムライ
わたしはフランス一般、シラク批判が多いのですが、シラクさんは偉大と思っている。フランスの大統領を振り返ると、ド・ゴール。ポンピドー。ジスカールデスタン、ミッテラン、シラクときて、皆例外なく祖国を背負う巨人である。一歩誤れば誇大妄想に思われるような信念と哲学があるようで、しかも引け際が美しい。シラクさん最後のサムライだな。ところで、英語もフランス語もできない国の民はどうすりゃいいの? そこんとこもシラクさんぜひ考察ねがいます。(了)

余録:フランスの雇用政策改革に反対するデモは長引く。暴れているのは一部の騒乱分子で、連中と警官の衝突は政治的意味なし。労組との対話は常にコンナン。



Pnorama Box制作委員会

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