● 虫のいい日本側の要求
東シナ海ガス田の日中協議は協議イッシューが1センチも進まないまま、中国側の新提案で終わった。今回だけではない、中国側が掘削活動を始めてから、というのは2年前か、以来3回のOn and Off協議はすべて物別れです。こんなことやってるうちにガス田はカラッポになります。それが中国側の意図でしょう。
で、日本は、もう何度も言いましたが、日本側がデータを出せとか資源の『境界跨ぎ』がハッキリするまで活動を停止せよ、というのはあまりにも虫がよすぎる。こういう話は両側がデータを持ち寄って、『跨ぎ』に合わせてじゃ1対2で分けましょうというふうに決めます。一方でもデータを出さなければ絶対にまとまらない。日中両方とも疑心暗鬼のうえ、一方的に相手のデータを出せという方がルール違反だ。
●あつかましい中国の新提案
この意味から中国側の新提案を最初はわるくないと思った。というのは、前回の日本海域での共同開発から中間線両側にまたぐ貯留層を共同開発しようということだと理解できたからです。つまり日中双方がデータを共有する共同開発であり、資源分配を公平に行う準拠ができる。ただし、こういう境界海域で共同開発は、係争中のグレーゾーン内で行う。たとえばバレンツ海ではロシアとノルウェーが互いに主張するMidpoint LineとSector Lineのあいだをグレーゾーンとし、この中での経済活動は共同で行うのが基本になっている。
さて、日中のあいだではどうなりますか。もし、中国の大陸棚境界をとるなら、日本が主張する東シナ海の日本海域は、もうぜんぶすっかりグレーゾーンになってしまう。日本外務省の説明では、中間線を跨ぐ区域だけではなく、尖閣諸島周辺と日韓大陸棚でも共同開発をやりましょう、という提案だという。これは中国に面する日本海域ぜんぶグレーゾーンにしてしまおうという策略である。厚かましいにもほどがある。どうして日本代表はその場で『ダメ』といわず、持ち帰って吟味するなどと返事したのかな。
●中間ラインを補強する日の丸リグ
現時点で、最も有効な方法は、日本の主張する中間線の内側でリグを立ててしまうのです。境界線の近くで資源のありそうな資源層を試掘するのです。中国側は、殊勝にも彼らが主張する大陸棚境界線でなく、中間線による中国海域で開発している。国際的に最も一般的なミッドポイント・ライン方式に一応従っているのである。だから日本が日本海域で行う資源開発の活動に、中国は手を出す資格がない、そういうことになりますね。
ただ、これも前に書いたように、東シナ海ガス資源は日本近海にはなく、中間ライン近くのガスは海底パイプラインを浅い中国側に敷設する以外、経済的にはペイしない。春暁(白樺)の井戸が抜き取られるなんてケチな問題ではなく、日本側は資源海域の原理・原則として境界画定に断固としたポリシーを貫いてもらいたい。(了)