安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ハマス、亀の歩みより遅くとも
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〈 Sat, 04 Mar 2006 〉


●ハマス一行と合わなかったプーチン
ハマスを招待しておきながら一行と挨拶すらしなかったことも心憎いパフォーマンスだ。米とイスラエルをあまり刺激せず、ハマスに国際舞台を教えた意義は大きい。

プーチンさんがハマス代表をモスクワに招待したのは、米とイスラエルがハマス封じ込めと支援金凍結のキャンペーンに成功している段階だった。首相候補がまだ発表されていない頃である。国際テロ組織として国連も認定していたハマス組織ををプーチンは『一度もハマスをテロ組織と認めたことはない』と、言い放った。大胆。パレスチナ選挙前と言い分が違うんじゃないかと思うが、先読みと即行はさすが絶対的な権力者プーチンである。

実際その後の国際動向はハマス承認に急傾斜したのです。ライス国務長官がなおも封じ込めと支援カットに協力するよう2月に中東を歴訪したが、サウジがライス到着の前、門前払いみたいにハマス財政支援を公式発表、エジプトではムバラク大統領に支援続行を説教されるしまつ。

●米の孤立
米が選挙前にPAに振り込んだ支援金を[返せ]という要求、2月20日のコラムに>ブッシュはイスラエルのガザ撤退後支援と選挙がらみでPA に払ったお金5000万ドルを『負けたんだから返せ』と文句つけるし、最大の貢献国であるEUは減額と遅滞アクションで報いた。<と書いたが、ハマスはこのとき既に返還しますと言っていたとおり、PAはひとまず3000万ドルを返還した。ブッシュは面倒見てきたアッバス自治政府から『あなたさまがいなくてもハマスPAはやって行けますヨ〜ダ』とばかり開き直られた。さてどうしますブッシュさん。

そして先週は頼みのEUがパレスチナ新政府にも支援続行、その額を発表しました。ここまでくるとイスラエルは当然として、米がひとり対パレスチナ政策で孤立することになった。ブッシュさん、考え直してくれるかな。呼び水がいる時もありますよ。

●たとえ亀の歩みより遅くとも
さて、モスクワに赴いたハマス一行はハニヤ首相が加わらず、ハマス政治部リーダーのメシャルが団長である。少しトーンダウンだが、待遇ぶりは警護・VIPコンヴォイの列を見る限り、独・仏の首長クラス。毛虫のように嫌われていたハマスが初めて経験する国際舞台である。ラブロフ外相との協議で、ハマスは依然としてイスラエルの存在を承認せず、成果はなかった。一朝一夕にしてハマスが変わるなどと軽薄な期待はなかったといえ、落胆しただろう。ラブロフは会談後の単独記者会見で、『パレスチナ武装派勢力が政治組織に変わらないかぎり、ハマスに未来はない』と、異例に厳しい口調。しかしまあ、国際世論はそれくらい厳しいことをハマス一行に知らしめた意義はたいへん大きい。

さて、プーチンは招待しておきながら、メシャルとは挨拶すらかわしていない。理由は、米への配慮よりも、イスラエルとの友好関係にヒビが入らないよう配慮してのことである。イスラエルはソ連から移住したユダヤ人が一番多く、イスラエルの政治家が話す英語がロシア訛りがもう殆どです。、両国の絆は政治形態をこえて見えない絆があり、ロシアにはまだ多くのユダヤ系がいるのです。

ハマス一行はクレムリンの内部を案内され、プーチン大統領の執務室はあちら、なんて説明を受けて、それでも初めての外交経験に感慨ひとしお、思いを新たにした。すなわち軟化の兆候である。たとえ亀のあゆみより遅くとも。(了)



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