安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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イスラムが謳歌する言論の自由と暴力
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〈 Tue, 21 Feb 2006 〉


●A sort of recreation
4ヶ月前の風刺マンガに昨年の暮れから急に火がついたムスリム・ヒステリーは1ヶ月以上たっても収まらない。あちらでは時がゆっくり流れ、ヒマ人、すなわち無職の人口が多いため、労組がなくてもデモは大規模に長続きするのです。数少ないリクリエーションのひとつとして、イスラムのアンチテーゼである欧米キリスト教国への反感を自由にデモることができるなら、最高の娯楽である。いくら暴言を吐き、教会を燃やしても、米もEUモオロオロするばかりで反撃してこないのだからさぞ愉快でしょうね。ムスリムがクリスチャンに感じる短い優越のとき。

風刺画は昨年11月にエジプトで2誌が掲載した。このときは反対キャンペーンをしましょうというイスラム聖職者のイーマンやアヤトラがいなかったので記事を見て読んだムスリム市民は反応しなかったわけです。コペンのイーマンが焚き付けたことは前のコラムに書いたとおり。世界各地のムスリムデモが予想に反して長引き、衝突で死者が、リビヤで16人、ナイジェリアで16人くらい、アフガニスタンは12人から月曜日はさらに10人増えた。娯楽はほどほどにしたいものです。

が、パキスタンではまだいろいろ日程があるようで、3月3日がゼネスト、5日はカラチで、7日にはタリバン揺籃の町クェッタでデモを計画中とか。

●言論の自由を満喫するムスリムたち
デモの様相はたんなる風刺画を発表した新聞に対する非難行動から政府へ、さらに米と米企業、キリスト教会への焼き打ちにエスカレートした。パキスタンでは国連も非難の対象になり、この点は御意。ということで、欧米への反感が原動力であり、風刺画はそのキッカケの役を担った。キッカケのテーマは予言者ムハンマドに限らず、コーランをキズつける言論風刺はときにポロっと出るだろう。そうやって何年かに一度は大きなムスリムの反欧米暴動のウネリがおこる予感がする。

反欧米である限り、言論の自由はムスリムたちがいちばん謳歌しているではないか。アフガニスタンではウサマを支持し、タリバンに味方するプラカートで気勢をあげた。イスラム圏のネットサイトには風刺画関係者の暗殺予告が次々あらわれ、ブログは何を書いても自由である。ラムズフェルドはネット宣伝においてアメリカはアルカイダに遅れていると嘆いたけれど、あれは中東政府が野放しにしているから起る問題だ。嘆くには及ばない。尤も反政府を書き込めばどうなるか保証できないが。

イランではアフマディネジャドに近い右派のアヤトラが『敵国を迎え撃つ核兵器を持つべきである』というファトヴァ(宗教令)をだした。これなんかは言論の自由というより、ほとんど中世の世界である。

ところで、予言者の風刺マンガを企画し掲載したイッランド・ポステン編集員のFlemming Roseさん、謝罪しないので独身だろうと前に書いたこの物静かな人は議論を提起するもので侮蔑意図はないと、現在も首尾一貫して謝罪を拒否している。編集長は謝罪してもわたしはしない、淡々としてますな。多くの関係者が警護付きで隠れ生活しているのに、このローズ氏は普段の生活を貫いている。見上げた度胸だ。 (了)



Pnorama Box制作委員会

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