安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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続・ムスリムの群衆ヒステリー
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〈 Tue, 07 Feb 2006 〉


予言者ムハンマド(ムハメット)の風刺画に抗議する過激デモは、そろそろイスラム圏を一巡したので下火になるかと前回予想しました。カブールでは4人死亡、予想は外れたようにみえるが、傾向は下火です。前日の暴動に刺激ケイハツされ、英、仏、インド、タイ、ニュージランド、デンマークなどのムスリム住人が呼応したことと、もう一つはこれまで一巡したイスラム国家で、抗議が平穏におわったところが再たび燻った。「ダマスクスとベイルートに負けるな」ってなライバル意識かどうか、少数過激派が破壊活動に出たことです。

●少数ミリタントの暴力
風刺画はすでに世界各地の20を越える新聞雑誌に転載されているが、オリジナルのデンマークが代表して標的にされ。月曜日午後、テヘランでオーストリー大使館が200人の暴徒に石と花火で攻撃され、警官に阻まれたため近所に火付けしたがボヤに終わった。これがデンマーク大使館のつもりだったというから笑えないまちがい。とはいえ、オーストリア第2の日刊紙がくだんの風刺画を転載しているので当たらずとも遠からずでした。

で、夕方400人の若者がモロトフカクテルを用意してデンマーク大使館にシッカリやり直し攻撃をかけたが、待ち構えた警備隊に催涙弾で追われ、高い塀の中にある大使館は被害をうけていない。テヘランは2度目だが数少ない過激派だけの行動である。しかし警備隊の数はあまりにもすくない。これがベイルーとのように数千人のデモ隊なら押し切られていただろう。

これらの各国の抗議デモに対して政府は、ガス抜きに有効なため泳がせている。反政府デモならダダーと軍を投入して蹴散らすのですが、例の『国民感情をいたく傷つけた』と困惑してみせるのです。今回のように12人のマンガ家が予言者ムハンマドを題材に12枚競作という企画は突出しているが、ムハメット、キリスト、シャカムニなど信仰の対象を風刺したマンガはいまに始まったことではありませんよ。その辺が腑に落ちない。いちいち覚えていないが、これらは眉をひそめる題材、それ以上でもそれ以下でもない。掃いて捨てるほどある顰蹙商品のひとつとおもっている。建物に放火・破壊・略奪は政治的抗議と関係ない犯罪、議論の対象ではない。

●デンマーク、ピンチ
今週カイロでラブ連合の商工会議があり、デンマークとノルウェーの製品ボイコットをさらに広げ、それでは不十分としてデンマーク船とノルウェー船のボイコットを協議する予定。イランは既にデンマークへの全通商を凍結すると表明した。イランが先に経済制裁発動ですぞ、国連は3月になってから討議、それも制裁にいたらないのがはっきりしている。ちなみにデンマークからイランへの輸出は年間2億8千万ドル、輸出の0.3%を占める。それ以上に海運業の痛手大きい。

先のコラムに言及したデンマークのイ−マンは「イッランド・ポステン」を政府発行の新聞と偽り、抗議運動と製品ボイコットを説いて世界各地のイスラム聖職者に告げて回ったことが判明している。まさにそのようになった。パキスタン地震の同胞被害者が凍えているというのに、なんてことでしょうね。(了)



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