安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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メルケルが往く、ユダヤの国へ西岸へ
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〈 Tue, 31 Jan 2006 〉


●ライスのお株を奪ったメルケル
パレスチナ混乱のさなか、ドイツのメルケルさんがイスラエルでオルメト首相代行とにこやかに会談、ドイツとユダヤの絆はホローコーストより強し、独イ関係をアピールしました。翌、月曜日は西岸ラマラでアッバス議長と、ここでもニコニコ会談です。メルケルさんの何処が魅力的なのか、ピンとこないのですが、ほんとによくもてる人だ。実際、ハマスが第一党になったことで対応が頑い英米仏と国連カルテットの声明にくらべ、いともたやすくイスラエルとパレスチナを訪問し、停止緊張緩和にたいへん貢献しました。オルメト、アッバスがハマス勝利後はじめてあった西側首脳です。

こういう仕事はコンドリーサ・ライス長官の仕事じゃないですか。メルケルさんにすっかりお株をとられましたな。ま、具体的な外交成果をあげたわけではないが、行く先々でホノボノ効果があらわれる。たとえばアッバスに、英米仏が「武装解除とイスラエルとの共存を認めない限り、ハマスと交渉の余地なし、ハマス政権には資金援助を停止する」と高飛車におっかぶせるところを、メルケルは「武装過激派をのこしたままでは支援を考え直すことになるでしょう」。と婉曲にもってゆく。警察の取り調べにドナリ型刑事とホロリ型刑事がいるように、メルケル節はこれからも有用になるだろう。欧米間の中道をゆくドイツ・メルケルの選択が、使い古された各国首脳にはできない調停役をもたらしたといえる。

●ハマス兵糧攻めはファタを苦しめる
さて支援金はどうなるか、日本も多額の援助をPA(パレスチナ自治政府)に与えている。ラマラの大統領府修復を川口外相が約束していましたが、どうなってるのかな。米英、欧州各国もそれぞれ定額を支援してきたが、ご存知のようにそのお金は使途不明部分が多かった。アラファトは「国外旅行をしても良いが戻れる保証はない」とシャロンに警告されてからというもの、脅し集金に世界を回れなくなったので収入はガタ落ちした。ゼイタクに慣れた側近閣僚はいまや毎月公務員に給料が払えない自転車操業です。

政治家のふところと公務員の給料に化ける援助金はやめた方がよい。そうやってファタ指導部の息の根を止めた方がよいとわたしはおもっている。汚職ができなくなるのですからいいじゃないですか。ハマスの財源はサウジ、エジプト、シリアなどのムスリム兄弟国や在外パレスチナ人による義援金である。ハマスは各国NGOの協力を得ているが、西側政府からの金銭援助はうけていない。したがって最も困るのは、汚職ができなくなるファタ指導部と、資金が途切れる傘下のアルアクサなどの過激派であって、だからいま彼らは暴れている。ハマスは差し迫って困らないのである。といっても、政権について国政に携わるとなれば援助はいります。そのことは後日また書くとして、アブ・マーゼンが大統領でいる限り、西側の援助はキレないだろう。

●イスラエルの経済制裁
いま一番パレスチナ側がイタイのはガザ地区からイスラエル側へ通行制限されたため、野菜などイスラエル側へ運んで売ることが不可能になった。また、パレスチナ側への輸出品はイスラエルが税関代行し、というのはいまのところ空港、港湾はすべてイスラエルが管理しているのである。唯一外国へ通じているガザ地区とエジプトの通交はモノの往来がすくなく、経済的にはイスラエルに頼っている。

で、税関での代理徴収や、イスラエル側へ通いで働く労働者から徴収している税金も月ごとにパレスチナの所轄官庁へ戻金されているのだが、12月分をいまイスラエル側は国際的な「ハマス兵糧攻め」の一環として凍結しようとしている。(続く)



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