安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ハマスが勝ち取ったパレスチナ
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〈 Fri, 27 Jan 2006 〉


●民主選挙の結果を受容せよ
パレスチナ評議会(国会)選挙はハマスがぼろ勝ち、絶対多数の第一党になりました。これぞ選挙の醍醐味ですな。132議席中ハマス76議席、ファタ43議席、残りは2-3人の独立系少数政党5つある。

わたしはこの結果をたいへん歓迎しますね、感激すら覚える。説明いたします:
パレスチナ民主選挙の実施はこれが2度目だが、前回1996年の選挙をハマスはボイコットしている。このときはオスロ合意に基づいて自治政府評議員選挙と大統領の直接選挙が実施され、オスロ合意に反対したハマスはボイコットした。このときPLO議長だったアラファトが対抗馬なしで大統領に選ばれ、以後アラファトはなんのかのと理屈をこねて死ぬまで選挙を実施していない。

アラファトがファタを組織して武力による独立運動を起こしたのは41年前、この男がすべて牛耳っている間は和平などありえず、死んで14ヶ月目にファタは野党に転落。これぞ選挙の醍醐味、パレスチナ国民の意思が表明された結果を尊重しよう。この選挙はロシアのウズベキスタンのエジプトのサウジのジンバブエのように非民主的なシロモノではない。監視委員のカーターさんが太鼓判を押す公正なパレスチナ選挙なのです。

●ファタ派汚職政治へのプロテスト
でもどうして和平を進めようとしているアッバス+クレイ組がぼろ負けしたんでしょうね。選挙前の世論調査や直後の出口調査でハマス40%ファタ47%はおかしい、数字は反対になるとわたしは予想した。予想以上にアラファト一味の汚職政治にイヤ気が蔓延していたわけだ。その辺のことはコラム三冊目12月30日「ガザ北部にバッファーゾーン(2)」でウップンを晴らしているので繰り返さないが、これは内政に成果なく、汚職を退治できないファタ幹部へのプロテスト投票です。診療所、貧者救済、学校などハマスの政治社会部が福祉を行ってきた草の根運動が支持を得たのであって、イスラエル攻撃と報復のハマス軍事部への支持は一部に過ぎない。

●再出発を模索するパレスチナ両政党
さて、これからどうなるか、ハマス幹部は自分たちで組閣できるとは思っていなかったので、ファタの意見も聞きたいだろう。が、いまは「おまえらできるならやってみろ」という失権側の態度である。アッバス大統領はとにかく新政府の形が整うまではブッシュから釘をさされていることもあり辞任しない。私的にはアッバスとファタのイスマイリ・ハニヤはソリが合うのでは、とひそかに思っている。

ファタ派にも一枚岩で対抗できない悩みがある。敗北の一因となった新旧世代の亀裂があり、派閥のゴタゴタを一掃するためにも「ファタ派総会」が久しぶりに開かれる可能性がある。いまイスラエルの刑務所にいるバルグーチなど、若手はハマスと協力しやすい関係にあり、新世代が躍進すればパレスチナは一変するのだが。

● Wait and See
当然ですが、現時点で常識的に米ロEUでテロ集団に指定されているハマスとつきあう政府はない。国連アナンの見解もおなじ。しかし、アラファトも生涯の大半をテロ組織のボスで通したので、必ずしもテロ集団の指定が問題なのではない。アッバスのファタ政府がテロを止められなくても、ハマスが政権につけば傘下にあるテロは押さえられる。ブッシュ、ライス、オルメト、その他の首脳が要求する『武装解除が前提』はwait and seeであるとともに、テロ集団の政府には支援金を凍結するというシグナルです。米政府が出資するNGO活動も縮小されるだろう。

一つ困ったことがある。ハマスが経営する幼稚園から小学校では反イスラエル教育が徹底している。あれが全国的に指導ガイダンスになれば、たまったもんじゃありません。余談ですが、イスラム国家には最後にタンがつく呼称が往々ある。イスラム原理主義のハマスを最右翼のネタニエフ氏が「ハマスタン」出現と決めつけました。(了)



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