安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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国立国会図書館関西館
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〈 Sat, 12 Nov 2005 〉


●百聞は一見に然かず

政府の音頭で大阪、京都、奈良が協力して関西文化学術研究都市というのが京都府の南、奈良よりの丘陵地に作られた。土地名を冠して通称「精華学研都市」とか、『京阪奈学研都市』呼ばれている。できてから10年くらいになるが、先月末の帰省時に一度見学しておこうとおもいたち、兄妹に連れて行ってもらいました。

奈良から京阪奈道路を走ると、4車線の並木道が美しく、ごちゃごちゃした市街部に比べると別世界のような豊かさがある。学園都市の研究施設は隣の建物が遠く離れていて、なるほどバブルの頃に計画・開発されただけあって贅沢なゆとりがある。と、おもいきや、バブルが終わって誘致企業が集まらなかったり、撤退した企業があったりでアキが多いという。そういわれれば閑散と侘しい雰囲気がする。個人的には生活感にかけるこの雰囲気が好き、ですが施設と企業にとっては死活問題だろう。

●ヒヤカシ半分で覗いてみれば

小雨降る土曜日、広い芝生地に総ガラスばり,飾りっけなく端正にして威圧感のある国立国会図書館関西館。ウワサに聞く先端的で利用者があまりにも少ない ガラスの建物を冷やかしにいくというよからぬ動機のわたし。

全景写真はデジカメに収まらないのでパンフからコピー。芝生の下半分が閲覧室、採光窓は芝生を載せてカモフラージュされている。

まず建物横の駐車場へ、植樹があり悠々の広さがあり無料である。土曜日のせいかけっこうパーキングしている車が多い。入り口に遮断バーがなく、無料であるのに警備員が見回っている。放置車などを監視しているのだろうか、要らない職員だが昨今安心感がある。

日本には珍しく天井が高く、吹き抜けのところもある。入るとき胸を張って緊張する感がある。入り口にある館内案内図を見ているとカウンターの制服のおじさんがニコニコとそばにきて「入館は階段をおりて正面、そこで手続きをしてください。」と。ウルサイナ、矢印もあるジャンと口にはださないが(オレたちあかちゃんじゃないんだぞ、ンまに)。

●よけいなお世話

で、下にいくと立派なカウンターに何人かお嬢さんが待ち構えている。図書室へは利用者カードを作って自動改札口を抜けるシステム。登録利用者の手続きをするとカードは定期のように使えるが、1日用もあるのでそうする。壁にある数台のATMみたいな画面に、名前/住所を入れると磁気カードが出る。英語と日本語インプットが使えるので正直に我が家の住所を入れるつもりで英語で始めると、横からお嬢さんがサっと『日本語でどうぞ』とボタンを変えちゃった。(おバカさんには逆らわない主義なので)ソーですか。アハハ。使い方案内嬢がカード機のそばで待機しているのだ。兄の住所を入れておいた。

「お荷物はロッカーへ、カメラは禁止されておりますので」と念押しされる。(わかっとりますがな)ハイハイ。

閲覧室へつづくホールの一隅に空港のVIPラウンジより上等な黒革スツールが円形に6つおかれていて、二人の若者がスヤスヤと熟睡していた。ここはいろいろ利用価値がある。閲覧室にも係員がたくさんいるが、こちらから用があってお願いしないかぎり邪魔しないのでホっとした。司書だもんね。デジタル検索ができる端末席がズラリ、東京の国会図書館にあるものも検索できる。家庭からアクセスするより便利で緻密な専用検索システムでした。欲しいページは直ちにプリントアウトを注文(有料)できる仕組みだ。あれはいちいち本からコピーするのでなく、デジタル化したページからプリントするので早い。

●閲覧室、贅沢な空間

検索で半時間ほど遊ぶ。書架は東京におけない物を持ってきたというが、よく分類されて揃っている。こういう所でしかお目にかかれない大ヴォリュームの学術書を手に取る喜びはあるわな。それに柔らかな自然光が天井屋根、実は地上の芝地から取り込まれるので、地下の大閲覧室とはおもえない『軽さ』が心地よい。もちろんトイレも確かめた。大理石が心地よい。しかし温風乾燥で手拭きペーパーがないのは不満。この日の入りは兄によると多い方だが、20%以下と見受けた。あまり税金を払っていない向きにはとても贅沢な気分になれる。

カフェテリアから屋上の芝生と樹木が植えられたテラスに出られるが、小雨の日だったので中で一服。売店にカップヌードルとかも売っていて、その場で暖めて食べられるようになっていた。喫煙室は取っ払うべし。

AV機器がついたグループ部屋が大小いくつもあり、どの部屋もカラッポでした。予約すればタダで使えるといえ、わざわざそのために大阪/京都から来ないだろうな。宝の持ち腐れに終わらなければよいが。

●どこか翳りのある存在

われわれヒヤカシ組が出口で無料講演会の案内を見ていると、カウンターのニコニコおじさんがでてきて講演会のパンフをひとりひとりに渡してくれる。至れり尽くせりだ。まだある。別の有料駐車場では運転席からとる自動入場切符を、係のおじさんがまずつまみ取って手渡してくれるんだな。名刺交換じゃあるまいし、いいおとながニコニコと自己嫌悪に落ちないのだろうか。公機関では不要な職員さんが多すぎる。目に見えない所ではどうなっていることやら。

利用者が盛況になれば、おじさんたちも本来の仕事、質問に答えたり駐車整理に忙しくなるのだが、いかんせん、ケイタイを切って1時間ともたない人の世に、図書館でもないだろう。この場合『民度が低い』と開きなおりたい気持ちもある。ハコよし中身よし、わたしは『あんなもん作りゃがってー』とは思わない。思わないが、どこか翳りの在る存在。帰途はいまいち意気あがらず、ユニクロの大きな店で買い物する。(了)



Pnorama Box制作委員会

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