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ムスリムヤングの暴動(2)
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〈 Mon, 07 Nov 2005 〉
●パリ燃ゆ 大佛次郎の小説に『パリ燃ゆ』という力作がありました。『鞍馬天狗』の作家がなぜ故にパリ・コミューンという民衆蜂起による社会主義革命を書こうとしたのか、文豪は反体制で愛国者ですから、ま、知らないことはそれくらいにして、現在のフランス共和国の土台である『自由・平等・友愛』がこのとき謳われたのである。この精神はしかし、不平不満分子がすぐ行動をおこし、それを尤もだと許す為政者が輩出することになる。フランスが世界一のデモ、ストライキの国である大きな理由だ。 フランス全土に拡大したムスリムヤングの暴動は9日目の夜は学校、商店、1300台の車に火をつけ、土曜の夜はパリ中心部にも炎があがった。政府はいったい何をしているのだろう。ド・ヴィルパンは連日閣僚会議を開いて有効な手だてが見つからないまま、対話対話と唱えて、やったことといえば移民地区のリーダーやモスクの指導者と無駄話をしただけだ。暴徒の若者は町内とか、アパートブロックのグループで固まって、そういう輪が全国無数にありグループを統括する組織も指導者もいない。政府が話し合おうとおもっても相手が見つからない、そんなわかりきったことにかまけていた責任者誰だ?ド・ヴィルパン首相です。治安にあたるサルコジ内相を悪者にして、物わかりのよいところを気取った天罰ですな。シラク大統領も同罪。 ●シラク10日目にして発言 そしてついに日曜日、暴動が始まって以来はじめてシラクさんがド・ヴィルパンを従えて見解を述べたわけですが、これがガッカリもので、公共秩序の確立、治安強化を短く語っただけ。夜間禁止令や軍隊投入など具体的な内容はなかった。 世の学生紛争の先駆けとなったパリ学生紛争のときは、ド・ゴール大統領がすかさず『らんちき騒ぎ』は許さん!と喝を入れたものです。軍人ではないシラクさんや、選挙に出たことがない外務官僚出身のド・ヴィルパンでは危機管理がまことたよりない。警察は数百人を逮捕しているが、放火暴徒は見物の仲間と携帯で連絡し合っているのでなかなか逮捕できないのが実情だ。うかうかしているとプロのテロリストがデキル若者を釣り上げて、ボンブ、ロケット砲などプロの戦法を伝授するのでは、と懸念される事態です。(了)---------- 後日記:8日朝の閣議で非常事態宣言をド・ヴィルパン首相が国会で発表。やっと夜間外出禁止や、捜査状なしに家宅捜索が可能になる。また憲兵を増強する。事件2日目から夜間外出禁止令を出してくれと嘆願していた警察署長がいた。実際に発令する自治体は少ないとおもうが、暴徒にも取り締まる側にも心理的な効果がある。 ----------
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