安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


-------- ----------------------------------
ムスリムヤングの暴動
------------------------------------------
〈 Sat, 05 Nov 2005 〉


●フランス全土に飛び火

警察に追われて変電所に逃げ込んだ移民の少年二人が感電死した事件をキッカけに起こった騒乱は、二週目にはいって、市民戦争の様相をおびてきた。この数日は毎日100台以上の車に放火、新車のショールームから、集車場に並んだバスを丸コゲにしてしまう。8日間で500台を燃やした。夜ともなれば移民地区は燃える炎が赤々と舞い上がり、幼稚園まで燃やすムスリムヤングたち。一番被害を受けるのは移民社会であるというのに……。彼らはイスラム過激派やジハードではないが、チャンスがあれば『都市テロリズム』の暴徒に化すコワイ存在だ。

ロスの黒人暴動を覚えていますか。10年以上も前ですが、ロドニー・キングというしごく紳士的な黒人がスピード違反で車から引きずり出され、警官数人に殴る蹴るの暴行を受けた事件がありました。この暴行警官の裁判で。白人ばかりの陪審が無罪にしたことが黒人社会にショックをあたえ、暴動がロスから米全土に燎原の火のように広がったのでした。

マイノリティーの暴動は、警察の不祥事にあたって当局が差別的に反応したときに発生する。ロスとパリ郊外の騒乱発生には共通点があったといえよう。パリ郊外で始まった暴動は、サルコジ内相の言動「警察は追跡していなかった」の発言が引き金になった。なかなか沈静化しないのはサルコジ内相の強硬なゼロ・トレランスもあるが、おっとりしたフランス警官とゴム弾では限度があるようにみえる。シラクさんもド・ヴィルパン首相も軍隊を出動させる気はないようだ。政治的にはポピュリストを承知で強行路線をとるサルコジ内相が次期大統領に株をあげたともう。

● フランス共和モデルの失墜

フランスのムスリム移民人口は欧州一で500万人をかかえる。植民地だった北アフリカが多い特徴があり、どの国でもそうだが、都市の郊外に移民ゲットーを成している。ガンバリと弱い立場を忍び、宗教的抑制のある移民第一世代とちがって、第2第3世代ともなるとフランスに生まれたのだから当然不平等に敏感である。

15〜25歳の若者失業率は36%、イスラムの若者だけみると50%を超える。社会政策に『過敏な都市区』(ZUS)と呼ばれる分類があり、失業率20%で平均の倍、収入が平均60%の都市区をそう呼んでいる。現在750の都市区が計上されている。そこではフランス語教育、市民平等、宗教国籍に関わらず移民の社会同化をはかる『フランスモデル』が成功しているハズだったが、実際は30年このかたお金をつぎ込んだ割には思わしくない。しかも昨今の医療・福祉カットで事態は嫌悪になっていたのだ。

ド・ヴィルパンが11月中に対策の『アクションプラン』を発表するそうですが役にたつかどうか。移民の子らを平均並みの失業率にすることは至難のワザ。翻って、日本にた〜くさん住む中国/韓国籍の人々は失業率や収入に差はみられない。フランスは日本を学ぶべきですね。(了)



Pnorama Box制作委員会

ひとこと言いたいなんでも・掲示板へ
筆者へのmailはこちらまで
HOMEへ戻る