安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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東シナ海ガス田と境界線
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〈 Wed, 02 Nov 2005 〉


●先んじる中国側の開発

中国は「春暁」、「天外天」のガス田開発を急いでいる。既にパイプライン敷設に着手した。天然ガスは同じエネルギー量で石油の千倍も体積が嵩張り、いくら圧縮してもタンカーで運んでいては採算がとれない。海岸地にリファイナリー(精製所)を建設しそこへパイプで輸送する。隣接する「断橋」や「冷泉」からも支線パイプで結んで大陸側の温州あたりへ運ぶ計画だろう。

「天外天」のヤグラで採掘成功の炎があがったといって、慌てるにおよばない。リファイナリーや貯蔵所の建設が始まったのかすら不明で、本格生産が始まるまではまだ1〜2年かかるだろう。海洋資源の開発計画は世界中予定通り進んだためしがない。生産コストを考えると現在の中国で消費して採算がとれるか疑問だが、渤海や南シナ海でも採算を度外視した開発をおこなっている。一党独裁の中国らしいやり方だ。

中国の安い石炭が枯渇し、CO2排出がすくないガス発電が多くなれば、それは地球のために結構なことで、中国のガス田開発に反対する理由はない。

●国境をまたぐ油田/ガス田

だが、中国が開発している東シナ海のガス田は日中センターラインの日本側に連なっている。盗掘だ、許しがたいってなことになる。境界をまたがる流動資源の分配では、両側のオペレーター企業が苦もなく処理している北海油田があるかとおもえば(前のコラム参照)、イラク側にまたがる油田から何年も吸い取ったクウェートは「湾岸戦争」を引き起こした。フセインはクウェート側が盗掘した油を現物の原油、あるいは賠償金で還付せよと3年要求してきた。それが無視され、堪忍袋の緒が切れてクウェートを夜襲、占領したのである。フセインが宣戦布告なしに攻撃したのですっかり悪者にされたが、あれはクウェートが悪い。

中国側は大陸棚が落ち込む基線を境界に主張しているが、中間線以東の大陸棚では調査船を走らせたり試掘などの活動はしていない。大陸棚資源に関する国際規定をセンターラインを超える場合にも適用するのは中国だってウシロメタイにちがいない。掘っている場所は中間線から中国よりに4キロです。

日中間では交渉が途切れながらも続いている。おもうに日本側が資料のウラ付けもなく相手に中止しろ、データを出せ、中間線をまたいだ海域で共同開発しましょう、でなきゃ我が方も試掘を始める・・と要求するのはムチャですよ。にも関わらず中国は1日終了した局長級会談で先んじる者の余裕を見せて、応じている。しかし、こういうのは互いのデータをつき合わせてビジネスライクにしないと具体的な進展は望めない。

●待たれる構造データ

中国は要求する大陸棚延長原則と日本が主張するセンターラインの中間で妥協したいため、大陸棚ラインを言い張る。ちなみに黄海では大陸棚が中韓両側にくっついているので中間線しか方法がないゆえに問題化しないが、中日間では深い沖縄海溝で大陸棚が切れている。中国の主張を覆すためにはまず中間線から日本側の大陸棚の地質構造データで優位にたつことしかない。帝国石油に示威的な試掘をさせるのは吸い返しを画策しているようで交渉を阻害するだけです。

中間線に厚い堆積沈降(Xihu Depression)があり、石油ガス資源はここに集中している。このあたりを資源エネルギー庁が最新の3D探査を行っておりデータ解析がもう終わる頃かとおもう。信頼できるデータもとに協議すれば共同開発の可能性は充分ある。東シナ海のガスを日本までパイプを引いてはペイしない。どうぼやいても中国側にパイプで送るしか方法がない。国益を求めるなら、見込みのない境界線確定を棚上げして共同開発にかけるべき、幸い二階新経産業大臣の方針と一致しているようです。(了)



Pnorama Box制作委員会

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