安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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カシミール大地震
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〈 Mon, 10 Oct 2005 〉


9日夜の時点で死者2万人、負傷者4万人。2003年、2万6千人の犠牲者をだしたイランのバム地震を凌ぐ、南アジア最大の地震になることはまちがいない。

お見舞いは公人にまかせておいて、さっそく諸々の感想を述べます。

●イギリス救援隊、先陣の功

最初にイスラマバードに到着したのはイギリス隊、ファイバーカメラや音聴器、捜索犬などで到着、そのまま例の崩落した高級アパートにパキスタン軍の先導で直行し、たちまち一人救出。行くのも早いが作業も早く、なにより現場での統率力がダントツに優れている。群がる観衆や、手作業の救出員に音を採取するので静かにするように命令、すると3000人ほどの衆人はさっと後ろに引いてじっと注視。それから数時間して、この現場の総指揮をパキスタン当局から委ねられた。元宗主国だから可能なのか、こういうマネは他国ではできない。

2番手はトルコ、地震国でそれなりの救助隊を持っている。3番目に日本隊が到着するはず。ウン、なかなかやりますね、ツナミ支援より早くなった。当地ノルウェーの赤十字隊は、スタンダード品とよぶ毛布、テント、飲料水、医療器具を積み込んで9日夕方出発したからもうついている頃だろう。

イギリスの早さはオホーツク海でロシアの潜水艇を救出した8月の活躍が良い例だ。4〜5日前にプーチンはブレア首相官邸で、このときの英国救助対委員に勲章を授与している。また官邸にある『コブラ』緊急対策室で非常事態対策を協議、実際は極秘の内部を勉強させてもらった。目と鼻の先のロシア事故を、あのとき日本が救出していれば、ロシア人の対日観がいっぺんによくなり、北方4島にかすかな光が射したかも……日本の失敗

● ムシャラフの本領

この人、現場に軍服で張り切っている。国際支援は要請というより義務を要求する口ぶりだ。海外在住のパキスタン同胞にも大統領基金に寄付するよう堂々と託宣をのべる。それでいて有名国際記者には神妙に答える気さくな面があり、相当なタマですな。もはやムシャラフを独裁者と書く記者はいなくなった。

ムシャラフは24時間でこの通り、軍を救助に投入した。ニューオリンズで米ができなかったことをやった、と自賛する。が、それは自慢にならないス。将軍の本人が政権奪取した軍事政権から、終身大統領職を新設し、いまも軍の最高司令官で至る所に兵を配置している。命令一下軍隊を動かせるのはあたりまえでしょう、独裁者だもン。さらにカシミール地帯は印パ両軍の兵が常時集結している地域である。であるのに、核を持っているパキスタンがヘリが少ないので寸断された被災地に行けない、ヘリコプターを送ってくれ、なんてのはまさにブラックジョーク。ま、この国は成長率7%ほどあり景気よくなっているが、世界最貧国グループを抜けだしてはいない。

ところであの崩壊した12階建てのマンションは外人の多い高級アパート。亡くなったJICAの若い隊員がどのマンションかしりませんが、毎日運転手の送迎でお勤めなさるとは恐れ入った。

● 印パ、カシミール紛争と災害

インド洋ツナミではアチェ独立運動武装派とインドネシア国軍の停戦が実った。カシミールはどうか、印パが救助活動で協力する場面はあったとしても宣伝用だろう。せめて国際救援隊の国境往来を自由にするぐらいの善意を示してほしい。パキスタン側には政府の禁止している過激派グループが山岳部に勢力を持っている。ムシャラフはこれを契機に過激派を掃討したいと思うだろう。首尾よく行けばカシミール50年以上の紛争に……明るい材料にはなる。(了)



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