安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ロシア潜水艇“Priz”浮上
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〈 Mon, 08 Aug 2005 〉


●早い支援要請と改善されないロシア海軍
2000年8月、原子力潜水艦『クルスク』のエンジン停止事故では全員を酸欠でみすみす死なせる悲惨な結果になった。あのときは事故発生から一週間後、救助絶望なってから国際支援を要請し手遅れになった経験から、今回は事故の翌日に米英日に緊急支援を要請している。プーチンは先の体験からロシア艦隊の救助能力を信用していないし、クルスクのレッスンを軍が学んでいない事も知っている。こういう場合、プラグマチックなプーチンの行動は柔軟であると同時に、都合の悪い事には顔を出さないし発言しない。

●どこかとぼけたロシア潜水艇の事故
茶化すわけではないが、ロシア潜水艇の事故で笑って忘れられないものがある:当地のフィヨルド内部に一人乗りの国籍不明忍者潜水艇が侵入、袋のネズミだが逃がしたかたちにしてあげた。もちろん問題回避と『貸し』をつくる政治的判断です。しかしフィヨルドの奥に潜り込んで軍事的メリットがあるのだろうか。また、浅いバルト海ではスウェーデン海岸の岩礁に乗り上げて動けなくなった。スウェーデンは乗組員を救助して潜水艦を丁重に帰してあげました。帰還した艦長の消息は知らない。

カムチャッカ沖で救助された小型潜水艇『プリッツ』は海底に設置された沿岸警備アンテナを点検中にアンテナのワイヤを舵に絡ませてニッチもサッチもいかなくなったという。まるでお笑い番組だ。映像では2本のワイヤが巻き付いている。このワイヤは重さ60トンの錨で固定されているので、けん引きに失敗するのは自明の理でした。思い出すと笑ってしまう。スクリューが漁網を巻き込んだとか、底網に入ってしまったという報道は笑われたくないための作り話だったのですね。
 
ポッカリあがったAS28型バチスカーフ“プリッツ”はずんぐりして赤白の工事標識のように塗られていて微笑ましい。これはじめは右の写真のように黄色と白の縞模様でしたが、イエローサブマリーンとおもしろがられるので塗り替えたという「それらしい」うわさがある。発見されやすいように色塗りしているのはこの潜水艇が公表通り調査や訓練に使用されるためである。ま、それだから支援要請しやすかったのだろう。もっともロシアのメディアは米英日が支援を申し出たと報道しています。

●イギリスが制した支援先陣争い
支援に一番のりした英国が潜水艇救助ロボット『スコーピオ』(写真1)を使ってワイヤ切断に成功、自由になった潜水艇は自力でポッカリ浮上した。作業は5時間で終了、英国の力量おそるべしである。現場に一番近い日本は救難母艦ほか4隻を派遣したが、あちらにつくまでにコトは終わってしまった。日本の技術力、組織力、機動力はどこよりもすぐれているなどと思わない方がよい。米は写真2のような容力の大きい有人深海救助艇をカムチャッカ・ペトロパブロフスク空港に空輸したが、英国に数時間遅れたため使用されていない。しかしながら米は英チームのリモート操作に立ち会い、潜水隊員がロボットを現場に沈める作業を助けている。

ロシア外務省とイワノフ国防相は何も出来なかった日本も含めて支援に感謝の意を表明した。しかし、モスクワで行われる救助成功と支援感謝のパーティーに日本救助隊員が招待される気配はない。

1, 2,
1. 英の深海救助ロボットスコーピオ5、民間会社James Fisher Rumicの製品、http://www.rumic.co.uk/からSUB RESCUE→SCORPIO参照。北海石油リグと海底パイプの作業に開発されたロボットhがもとになっている。大きさはダブルベッドくらい、常にグラスゴウ空港に待機している。ワイヤカッターほか、事故艇のハッチから水、食料、炭酸ガス吸湿装置、酸素の「生存函」を渡すことができる。
2. 米の有人深海救助艇、アームから複雑な操作が可能、事故艇のハッチに着装して乗組員28人が移動できる。



Pnorama Box制作委員会

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