安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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テロ容疑射殺、警察官の過剰反応
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〈 Sat, 23 Jul 2005 〉


●怪しまれる服装と移民系
夏、ロンドンを歩くときはジョッギングシューズに野球帽のいでたちが快適でよい。水ボトルと軽食のボックスをリュッックにいれて、ハイドパークやケンシントン公園で本を読む。通園にはもちろん地下鉄やバスを使います。そんな夏休みを何年か楽しんできたが、テロ捜査が厳しくなった昨今、この格好があまり適切ではさそうです。

テロ事件があってから大きなリュックを背負ったり、厚ぼったいコートを着ていると怪しまれます。金曜日、ロンドン市内からちょっと離れているストックウェル駅で場違いな冬のジャケツを着ていたアジア系の男が射殺された。地下鉄ノーザンラインの駅を駆け下り、電車に飛び乗った男を追って私服ポリス2人が取り押さえ、取り押さえた上でもう一人の私服が5発を連射したという。

●射殺は処刑的な行き過ぎ
恐怖の乗客は隣の車両になだれを打って移動した。出口で転んだ15歳の女性を踏んづけて逃げ出す狂奔ぶりである。居合わせた目撃者の話しなど、こういう記事なら大衆紙『ザ・サン』が詳しい。目撃者の明かす状況からはどう考えても、警察のオーバーアクションに思える。

ロンドン警視庁のイアン・ブレア総監は、死者が出たのは残念と断って、『テロ犯捜査の一環である。容疑者は警官の命令に従わず、爆発させる危険性があったため射殺した』。非常に言葉少ない。しかし各メディアはレプリカ・テロで写真公表された手配の4人とは別人であるという。目撃者情報によると男は爆弾も武器も所持していなかった。

●ロンドン警視庁の対テロマニュアル
夏のロンドンに冬着のアジア系?この男性は自爆ベルトを隠していると怪しまれ、私服が追っかけていた。20人ばかりの警官が応援に招集され、もうこの段階で「テロ容疑者」と決めてかかったのではないか。その男が地下鉄に逃げ込んだとなれば、アンチテロ捜査官が常軌をうしなう環境がでそろったといえる。

スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)は伝説的に優秀と定評があり、世界のお手本である。だからといって万能ではあるまい。実際、7日と21日の同時多発テロに関連して逮捕者は出ているが、確定した容疑者はまだひとりもいない。しかしさすがノウハウに長たロンドン警視庁には、アンチテロ特殊部隊の武器使用、射殺方法についてマニュアルが整備されている。自爆テロの対処に経験のあるイスラエルやスリランカの助言をとりいれたそうだ。

体のどの部分を射つか、遠くから容疑者一人なら体の真ん中を狙う。犯人の近くに人が多い場合は体に巻き付けた爆薬が爆発する危険があるので頭部または足を、また手に起爆スイッチを握っているような時は頭しかない。金曜日のストックウェル駅射殺は、どうやらこの条文を拠り所に警察は正当を主張するようだ。だが取り押さえた上で動けない男に5発も射っている。マニュアルに逸脱している。道義的にも疑問だ。うやむやにしないで内部の独立捜査をキチンと進めてもらいたい。(了)



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