安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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Non Non 欧州憲法
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〈 Sun, 29 May 2005 〉


この稿、欧州憲法賛否を問うフランス国民投票が否決されたと前提して、書き進みます。が、可決されても訂正しない意見です。シラクさんが3年前の大統領選で、地滑り的に82%を得票した。あれがそもそもの間違い、極右ルペン台頭の恐怖から票が流れたことによる。シラク支持を示す数ではないのです。

フランスの欧州憲法国民投票はシラク大統領への信任投票そのものです。ていねいな分析論調は小難しくって要領を得ない。EUが発足してフランス人の生活がほんとうに良くなったのなら、どうしてシラクEU構想に反対したりするでしょうか。

●反対の理由を単純化すると:
フランスの失業率は10%を超える。域内経済がより自由化され安い商品が東欧加盟国から出回り、農業、中小企業は競争力を失う。安い労働力が、特にトルコから流入し職場を奪われる。党派的には国粋主義の極右と保護主義の極左が反対。

フランスの主権が削られる。特にEU大統領やEU外相の新設など、ブリュッセル本部の力が強力になる事への懸念。スキャンダルまみれのブリュッセル本部は反EUの大きな原因。

●仏大統領のビッグマン症候群

シラクは夢を売ってきた。その夢を国民が買ってくれるとおもい国民投票にゆだね、それで2007年の大統領選を手中にするするつもりだった。欧州憲法の批准は加盟各国それぞれの方法でよく、無難にやるなら国会決議で批准してもよかったのだ。ま、姑息な手段はとらないシラクさんだからその点尊敬に値するが、潮流を読み違えたら政治家はおしまいです。フランス大統領の地位はビッグマン症候群に罹りやすい環境にあるのか、ドゴール、ポンピドー、ミッテランみなさん大なり小なり。シラクは在任10年だもの兆候あります。

●否決されたとして今後のうごき
さて、国民投票の結果投は「投票所への途中で決めます」なんていう賛否未定者が10%もある状況では世論調査など役に立たない。否決された場合、それでもシラクさんは威厳を維持しては欧州統合にたゆまぬ前進を説き、数年後の再批准に意欲を燃やすでしょう。あの人にはそんな態度がふさわしい。
しかしどっちに転んでもラファラン首相は更迭、コアビリタシオン*解消など政界再編成、欧州連合の停滞は避けられない。

2月、スペインがトップを切って欧州憲法を批准した。サパテロ氏は列車テロでたまたま野党党首にいたおかげで大統領になった人物。いきさつから米離れEU密着のお調子者が大差で成功したが、投票率は42%。興味がないのではなくて何を意味するか戸惑った国民が多かったからで、いまもう一度やらばあやしい。ドイツは国際政治の立場を強く出来るので連邦議会で批准した.国民投票ならどうだったかあやしい。ただしシュレーダー秋の総選挙で完敗する。今週オランダで行われる国民投票は否決がほぼ確実。欧州憲法は全加盟国の批准が条件のため、今後も躓く国加盟国がでるだろう。イギリス、デンマーク、アイルランドが危うい。(了)

*注、2002年の仏大統領選と社会党とのコアビタシオン保革連合(2002.5月5-6日)、欧州憲法の概要(2003.6月21日)など、過去のコラムにあり。



Pnorama Box制作委員会

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