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ウズベク危機、カリモフ圧政の15年
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〈 Sun, 15 May 2005 〉
●代々イスラムのフェルガナ盆地
ウズベキスタンの東、キルギスタンに貫入するように三角盆地がある。フェルガナ盆地とかフェルガナ谷とよばれ、大きさは関東平野ぐらいか、周囲を4〜5000m級の雪の山脈が自然の砦を成している盆地は数百万のイスラム系住民の故郷である。因みにウズベクを通るシルクロードはブカラ、サマルカンド、首都のタシケントから山脈の北を通ってカザクスタンのアルマアータへ向かう。袋小路のフェルガナ盆地はいわば隠されたイスラムの土地であった。 13日暴動があったアンディジャンAndizhanはこの盆地の中心都市である。カリモフ大統領はイスラム原理主義者の犯行という。そういう一面は否定しないが、抗議に集まっていた女性や子供が多い3千人のな市民に軍が発砲するとはあんまりだ。天安門事件以来なかった政府の暴挙ではないだろうか。ウズベキスタンのカリモフ、トルクメニスタンのニャーゾフ、カザフのナゼルバエフは、人権蹂躙、拷問と圧政の独裁者トリオとして悪名高い。 ●独裁者カリモフのイスラム弾圧 カリモフのフルネームは“イスラム・アブドゥガニエヴィッチ・カリモフ”、イスラム系にちがいないが党員だから宗教色は消去している。89年にソ連邦ウズベク共産党書記からソ連崩壊に伴い90年からウズベク共和国大統領に、翌年独立国となって横滑り大統領に、以後2回憲法を書き換えて任期を延長し、今年の選挙も対立候補なしでえらばれると2012年まで20年以上もカリモフ天下が続く事態がおこる。そんなことがあり得るだろうか。 イスラム教にたいしては国が定めた宗派以外は反政府分子とみなし、フェルガナ盆地の大半を占める「アクラミヤ」派を弾圧してきた。アンディジャンでは夫や息子を拘束された妻や母親が法廷のまえでここ4ヶ月、連日静かな抗議デモを繰り返してきたのである。数日まえ、アクラミヤ派のビジネス成功者23人を過激派『イスラム解放党』Hizb ut-Tahrirに関係があるとして逮捕したが、これに抗議して12日にはアンディジャンで大規模な平和的デモがあった。 ●貧しさと将来への絶望 13日にはとうとう武装過激派が刑務所を襲撃して拘束者を解放、これが暴動の直接原因である。しかし貧しさと将来への絶望が暴動のほんとうの起因である。ソ連から独立したNIS12カ国の中でも最も貧しく、実情はソ連時代より経済的に悪い。 そして武装派が州庁舎占拠したわけだが、これは隣国キルギスタンで2ヶ月前にアカエフを倒した政府庁舎の占拠と同じ手法。うまく行かなかったのはカリモフが学者アカエフより冷血な独裁者であったこと、またアンディジャンがイスラムの町であったことも軍事鎮圧の言い訳に利用されてしまった。 昨年はタシケントでイスラエルと米の公館に過激派の自爆テロがあった。米は9.11のあとテロ対策に熱心な国は独裁であろうが全体主義であろうが盟友として手を結んだ。カリモフにも「よいしょ」してウズベクにアフガン攻撃のため米軍基地を置き、いまも保有している。そのためか、米は民主化を要求するアンディジャンの市民デモが粉砕されたというのにたいして非難もせずフヤけている。ブッシュは『民主主義に立つ者には米がついている』と大見得きっておきながら見苦しい。プーチンは軍事鎮圧のカリモフ支持をいちはやく声明をだしたが、黙っていてはプーチン発言を認めることになりますぞ。(了) |