安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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モスクワの夜は明けて
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〈 Sun, 08 May 2005 〉


●シラケるロシア軍人栄光の祝典
9日、世界50カ国以上の首脳を集めて対独戦勝60周年記念式典がおこなわれる。ロシアの栄光を祝うプーチン一世一代の檜舞台。そんな祝賀式典はロシア国内でたくさん、各国首脳が付き合う理由もないのわざわざシラケに行くようなものだ。

ま、断れば外交上マズいから参加しておくにこしたことはない。日本に関してはプーチン・小泉会談というオマケもあり、胡錦濤が会わないのは幸いだ。日独認識にかこつけたまちがった注きかない論評を聞かなくてすむ。

きょうはソ連軍がベルリン包囲を刻々とヒトラーの地下司令部迫る日々、バンカーに籠ったヒトラーや愛人エヴァ、ゲッペルス家族や側近たちの動きを現存フィルムで追ったドイツ放送制作のドキュメントを見る。ナチズムを断罪するが、もちろん謝罪のために作ったのではない、いわゆる現実直視というもの。

ヒトラーがポーランドをひねり潰し、ソ連に侵攻してこのとき2700万人のロシア人が殺された。だから反撃にでたときはドイツの村々を略奪し民間人を虐殺、レイプしてベルリン攻囲にむかった。ロシアはいまその部分は隠して失った2700万人の慰霊に対独戦勝を祝うのです。ついでにヨーロッパを救ったのは我々だという解放者としての自負がある。『モスクワの夜は明けて』ロシア軍人晴れの日だ。他人が見ておもしろいものではない。

ソ連兵の生き残りだけでなく、生活が苦しくなった退役軍人の不満を和らげるのがプーチンの第一義とすれば、国内祝賀に限定しておくべきだった。国際的な催しに欲張ったため、ロシアの脆さが露出する結果になりました。

●米露論争、ヤルタ会談
7日、ブッシュはモスクワ訪問にさきがけてラトビアの首都リガでバルト3国首脳と会談。由緒ありそうな文化ホールで200名ばかりの名士を前に演説。昼寝の途中でライブを見ましたが、ブッシュの演説としては民主主義ミッションの最たるものです。歴史の深みが加わりました。第一次、第二次大戦の戦後処理がいかにあやまっていたか、そのためバルト3国はソ連に併合されて50年苦しんだ。安定のために自由を捨てた安易なヤルタ会談を批判した。

ウケルはずの演説に、聴衆の反応は石のようで合間の拍手は一度も無かった。英語がわからない人ばかりじゃあるまいし、やはり考え方にギャップがあったのか。ヤルタ会談はスターリンに東欧をすべて与えてしまったとするブッシュ解釈に、プーチンがルモンド紙に寄稿してポーランドはソ連の庇護に感謝すべきだとして反論している。またバルト3国への賠償は解決済みとしていっさい交渉に応じず、謝罪しないとしている。

東欧のみならず、北方4島占領にまで尾をひいたヤルタ会談の欠陥は定説正論になっているが、どっちもどっちですな。ブッシュのイラク戦後処理はあれでいいのかしら。自由解放と民主主義を助ける大義はたいせつですが、治安も大事ですよ。モスクワのあと、式典をボイコットしたグルジヤを訪問する。ホワイトハウスはクレムリンをを怒らせて楽しんでいるような。(了)



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