安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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本場で聞くチェコフィル
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〈 Mon, 02 May 2005 〉


●意外に明るい演奏
4月25日金曜日の夕べ、コンサートにちょうど良い日、ルドルフィーヌムへ。チェコフィルの本拠地である。また料金のことで恐縮ですが安い。一番高い席で3300円くらいですから2週間前にネットで前から8列真ん中の席を予約しておいた。

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 ↑ 開演15分前のルドルフィーヌム(別名ドヴォルザーク・ホール)

夜会の盛装をした観客が多くタキシードの小学生までいましたな。なかなか大時代的な雰囲気でホーと感心すれどバカバカしくもある。曲目はなにか、家内もすっかり忘れていた。教訓:他人をあてにしてはけない。チェコ語でもいいからプログラムを買いにいくと、それが売ってもらえなかった。おばさんはおつりとプログラムを渡しかけて急に引っ込めたのです。何がなんだか、What's wrong? どうも通じない。するとそおっとお札をよじって一センチほど破けているのを見せてホラネ。少しでも破けているのは受け取れないというんですが、オレが破ったわけじゃなし。ほかに細かい持ち合わせはない。あきらめた。

はじめはモダンな曲、いい音です。指揮者のおじさんは陽気で軽やか、踊るような指揮ぶりで、楽団とのまとまりが非常に良く、和気あいあいというかなれ合い気味が気になる。常任指揮者ですよねキット。10分少しで終わったシンフォニア。曲自体はちっとも面白くない。(あとでチェコフィル4月演奏日程を見るとハーヌスの交響詩「ピーターとルーシー」、指揮者はズデニク・マーカルでした。)

●一見プロレスラーのピアニスト
2番めはピアノが運び込まれオケの席が手際よく片付け並び替えられた。入ってきたピアニストがレスラーかアメフトかと見まごうばかりのGI刈りのキンニクマン。白シャツ姿である。ウォーというどよめきがさして大きくない豪華なホールにこだました。家内はアナボラ・ステロイドと囁いた。アゴが張っていてアントニオ猪木に似ています。

この男が目の前にデンと座ってピアノに向かうとその胸の厚さ、腕の太さがすさまじい。ピアノを持ち上げるのではないかと思うほど。オケからはじまった導入部はラフマニノフのピアノ協奏曲第2番。豪腕豪快にしてテンポが正確。音のメリハリがくっきりしていて濁らない。そしてピアノをわしづかみする姿勢からすすり泣くような音色が出るのです。音色の豊かさに唸りました。イヤミのない弾き方にとても好感がもてる。『タンタタタン』で終わったときはギャーと叫びたいほど、観客大喜び。来てよかった〜!

オケもよかった。指揮者は非常によくピアノをもり立てていました。それだけ実力と余裕のあるチェコフィルといえる。また白シャツピアニストは楽譜を置いていた。図体が大きいから楽譜をたてるのではなく寝かせたまま見てるわけですが、これもまた余裕があるから楽譜に目をとおせるといえそうだ。

キャシャなピアニストだと上体を左右に、尻をずらしたり、ちから一杯ガーンとやるときはお尻を浮かさないといけない。ところがこのプロレスまがいの白シャツは胸を張ってデンと座ったまま鍵盤の端から端までガンガン叩き、触れねば落ちる音まで繊細なこと、音を包み込むのが巧く、かなりペダルを多用していました。アンコールにラモーのクラヴサン曲集からひとつ。透明で清楚な古典、しっとり融けるように聞かせました。

さて休憩があって最後はドヴォルザークのはず、とおもっていたら「シェヘラザード」が鳴りだしたぞ。コルサコフでありました。各楽器のソロがふんだんにあり、特にコンサートマスターとオーボエの腕が試される。で、やはりうまい。この曲はナマでこそ楽しめるようにできている。

●ツィモン・バルト (Tzimon Barto, USA)
ホテルに帰ってから、前記の日程案内を見ると、キンニクマンピアニストはツィモン・バルト、聞かない名前ではない。しかし家内は、ラフマニノフはルービンシュタインのスタイルのほうがロマンチシズムがあって好きとがいう。それはわたしも同感で、家内はルービンシュタイン+カラヤン/ベルリンフィルの組み合わせLPで聞き慣れているし、わたしのはホロヴィッツで3番を、2番はグラフマン+バーンステイン+NYフィルの組合わせである。バルトの演奏は私たちには固いようだ。けれど若い音楽家にそれを言うと苦笑いされる。たしかに昔の巨匠風に演奏しては失笑を買うだろう。でもやはり昔聞き慣れた調べがわたしたちにはいいんですよね。(了)

下の写真はドヴォルザーク博物館。元、どなたか離宮でドヴォルザークが住んでいた家となんの繋がりも無い由。市内から少し離れたわかりにくいところにあり、昼間2時間休館する。待つ間、裏庭のベンチにいるとワンショットグラスとパン、コカコーラを手にだらしない男隣のベンチでランチらしい、開館の五分前に立去った。さて時間が来て博物館へ入るとくだんの男が受付におるじゃない。しばらくするとドタドタとポケット瓶をもった男が階段ををおりてきてくだんの男にわたしている。まあ羨ましい職場ですこと・・もとい、正統ドヴォルザーク博物館をなんと心得おるか、タワケ者め!



Pnorama Box制作委員会

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