安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


-------- ----------------------------------
蹂躙と革命、処刑のボヘミア史
------------------------------------------
〈 Thu, 28 Apr 2005 〉


●ガイドつき6時間プラハ散策
プラハの観光ツアーは多種多様あり、そのなかにモルドウ観光船と3コース昼食付き、市電に乗ったりしてめぼしい観光スポットを網羅したツアーがあった。集合時間と場所はアストロと計の下で黄色い笠をもった案内人、とパンフレットにあり、天気のよい3日めに出かける。

集まったのは20人くらい、ブリティッシュとアイルランドが大半、ニュージジランドの4人とわわたしたちノルウェーが2人というグループ。案内人は30代半ばの男性でヒッキリなしに喋る。煩いヤツにあたったな、しかしよく知ってるわ、歴史と文学にやたら詳しく、反共産主義で今日はアメリカ人がいないので反ブッシュも遠慮がない。このガイド氏をこっそり『兵士シュペイク』と名付けました。

東西に翻弄されたチェコの歴史は処刑の歴史である。蹂躙と革命、民衆蜂起、統治者がかわるたびに数万人が処刑され、紀元前からそんなことを繰り返してきた土地である。中世のボヘミア(チェコ)王にして神聖ローマ帝国皇帝となったカレル4世から、ハプスブルグ家が中欧に勢力を伸ばしたころがプラハの黄金期、欧州最大の都会であったという。モルドウに架かるカレル橋はその頃から、よく長持ちするいまでも一番立派な橋である。プラハ城、カレル大学など遺産がすごい。プラハの誇り・観光資源である。


*ドヴォルザーク銅像の向こうにプラハ城。


*プラハ城内ヴィトー教会現在の形、ネオゴジックスタイルの荘厳な建物、


*数あるうちでも出色のステンドグラス、なんでも有名な画家の下絵だそうだ。

モルドウの観光船で、ビールまたはコーヒ紅茶のサービス料金込みがある。飲んでると右手に原爆ドームがなんとかガイドが話しているが、はて?耳を傾けるとおよそこんな話し:原爆にたったひとつ残った原爆ドームはプラハの建築家ヤン・レツェルが設計した。彼は原爆を受けたが助かって後帰国、被爆のせいかどうか頭がおかしくなって自殺したという。3万人(ほんとは10万なんだけど)の原爆犠牲者とレツル心の鎮魂に政府建物、現在は経産省の建物に同大同形のドームを作った。建築学校でレツェルの兄弟と、共に学んだ建築家が集まって運動し、平和の証をたてた。というわけです。

ソ連の圧政と米帝国主義の蛮行に抵抗する下地はそりゃ、十二分にある国だもの理解できる。原爆ドームは川のそばにあって、あれはもと物産振興館とかいう建物でしたよね。プラハのもモルドウに面して経産省の建物。偶然の一致か立地条件は合っております。ガイド氏は反米だからいうことが激しい:『アメリカは絨毯爆撃で全土を焦土化し数十万の一般市民が殺された。残ったのは皇居だけだった』!

*プラハの原爆ドーム・レプリカ、円筒の足の分だけ背が高いような。

私たちがプラハで最初に座った目抜き通りのベンチの前に装飾過多なアールヌーボーの「ホテルヨーロッパ」があった。これもレツェルの設計だそうです。このホテルは日の丸もあがっていたので日本団体さん認定とお見受けした。

ガイド氏はまたスジ金入りの反共である。ソ連時代の搾取とコントロール、反体制弾圧と粛正追放に『彼らは一度も謝罪したことがない』と息巻くのです。中国の反日を思い出して事情は違うが唖然。そうだな、ロシアが謝罪などありえない。

チェコはプラハの春以来、ビロード革命まで20年かかっているのだ。現在の民主主義がどれほどまでに貴重な到達であるか、プラハを歩き、それぞれの建物の歴史を聞くと暢気な観光気分に真剣さがくわわる。


*国立博物館前の通りにあったプレートに置かれた写真。なにかとよく見れば焼身自殺を図ったヤン.パラフ左とと2日後に同じく焼身自殺した・・名前わすれた・・の記念碑でした。ドプチェクの社会改革にブレジネフがワルシャワ条約を盾にプラハ侵攻、抗議自殺したカレン大学の学生である。69年4月フサーク傀儡政権をもってプラハの春は終わった。


* 船から見えたレストラン・プラハ EXPO 58 の文字。1958年といえば大阪万博の前はこの丘陵が万博会場だったのか。上の建物がその展望レストランという説明。モルドウまたの名はダニューブ、プラハではヴルダヴァという。

ガイド氏はわたしが日本人と知って大江健三郎の『シク』を読んだことがあるという。シク?動物を育てるという意味の日本語だが・・・。シクじゃないのシイクと発音するのです。『飼育』、東大学生時代に書いた健三郎の短編小説でした。
(あと1回、チェコフィルについて書きます)



Pnorama Box制作委員会

ひとこと言いたいなんでも・掲示板へ
筆者へのmailはこちらまで
HOMEへ戻る