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キルギスタンの暴徒革命(3)
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〈 Mon, 28 Mar 2005 〉
キルギスタンの政変について、手当り次第に世界のキルギス報道やオピニオンを読み散らして半日過ごす。面白い。特にウクライナのように盛り上がりとクライマックスを経て新政権の揺るぎない歩みがはじまる……そういうレールが後ろも前も無いのがキルギスの政変だ。どうもまとめにくい。仕入れたネタを適当にあしらって手抜きモードでまいります。復活祭ホリデーですから。
●さっそく余談:復活祭の法皇 ローマ法皇は気の毒にお決まりの高い窓に現れてゼーゼーと。横から手が伸びてスイーとマイクを外されましたが、あの声にならない息音は聞かせられん。やる意思だけはガンコなヨハネ・パウロ二世でね、体が思うようにゆかないもんだから、付き人に当たり散らしてるって伝わりおります。アルツハイマー老人ゆえおどろくにあたらない。さて、司教が広場で代読する祝福メッセージに合わせて法皇はアテレコよろしくユラユラと10分間、イタについた貫禄はさすがです。聖ペテロ広場を埋め尽く巡礼は感激のあまり泣き出す人が、きょうはまた特におおかったようだ。 ●アカーエフのでしゃばり夫人 国家指導者のカミさんが口出しする国はあんがい多い。ユーゴのチトー夫人がそうだった。デビ=スカルノの夫人やブレジネフ夫人のように金遣いが荒いくらいなら嫌われ、また羨望される安全圏内だが、国家の産業・ビジネスを一族で牛耳ったり、カミさん政治を影で動かすようになると人民の怒りを買う。そんなわかりきったことをやってしまう愚。政権に長くいるとアカーエフのように無垢から出発した大統領すら裸の王様になり下がるとは。 主要企業のほとんどは息子と義理の息子が経営支配している。まっさきに略奪されたナドロニ・スーパーチェインは義理の弟が所有者、『吉尓吉斯坦中国国英店』という家電スーパーがよく映像にあったが、これも一族が関係している企業だ。すると毀し狂いする若者に恐れをなした商店が『当店は民衆の店です』と張り紙したり……もちろん暴徒に蹂躙された。 マイラム夫人は閣僚の人事に口を挟み、2月の選挙で娘を当選させるため、元外相のローザ・オトゥンバエバの立候補をどういう規則か禁じてしまった。彼女はいま野党で一番ハードなリーダーに転身、英語ができるので国際放送によく登場する。 アカーエフは14年も大統領職にあり、この10月の任期切れで退陣するがマイラム夫人にけしかけられて4選に向けた憲法改正をはかる矢先だった。そこまで常識がマヒしていたのである。とはいえ、流血を避け逃亡してよかった。国民こぞって感謝すべきもし武力鎮圧を選んでいたら内乱『キルギス燃える』になったであろう。 ●アメリカとキルギスタン 日本は在日米軍基地の維持費を出しているのに、アカーエフは米に基地を提供してショバ代をとっている。アカーエフの要請で今年、米は20億ドルを資源開発に投資する協定を結んだ。鉱物資源があるが、山国キルギスの強みは「水」である。水力発電でアルミニウムを作るのが目的だ。またソロス基金、フリーダム・ハウスなど、米のNGO活動が盛んである。後者は野党の新聞のオウナーで、元CIAディレクタージェイムス.ウースリーが主宰するヒモつき組織だ。 米としては中国、ロシアに接するキルギスはゲオポリティック上重要で、ヤング米大使は自由と解放・民主化のために走り回っていた。それが第1、第2選挙の結果、野党がまけたので大使は左遷だと思われていた。暴徒革命でクビがつながったとは皮肉。 この不正選挙は、しかし監視団のOSCE(欧州安全保障協力機構)不正はありとしながらも有効と認め、米も追認したのだが、マケイン上院議員が第1選挙の直後、アカーエフの野党議員投獄や抑圧による不正選挙を非難した。改めないと重大な帰結を招くと警告。そしてマケイン発言に呼応するかのように南部の都市オシとジャララバードで民衆蜂起が起こったのである。このあたりが政変を米の謀略とする中国見解のもとになっている。 でもちょっとちがう。南部はイスラム系で社会構造は500人ぐらいを単位とする部族社会である。部族長が代議士になる伝統がこの選挙で落ちた、または落とされたことに怒った部族長たちが、めいめい一族郎党を率いて「打ち毀し」を始めたのが実情だ。野党が組織したのではなく、まして米が組織したのではない。NGOなんてエリート相手の文化活動や技術員指導でお金を浪費しているにすぎない。何がおこっているのかロシアも米もだれも見抜けなかった。組織がない烏合の衆の先が読めなかったとおもわれる。(この稿しばらく続く) |