安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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解放されたイタリア記者の代償
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〈 Sat, 05 Mar 2005 〉


過去一年間でイラクで拉致された外国人は約200人、そのうち解放されたのは30人。残りは死体で発見されたものと行方不明者が大半、判っている生存者もすくなくない。

4日に解放されたイタリア人ジャーナリスト、ジュリアナ・スグレーナさん(56才)の車に米イラク軍が検問所で発砲、イタリアの情報官が死亡する事件があった。あきらかな誤射である。解放の知らせに関係者一同シャンペンで乾杯した矢先のできごとだ。スグレーナさんは助かったといえ、ショッキングなニュースである。

交通事故ならまだしもあきらめがつく。国民の反対をおしきって派兵支援しているベルスコーニ首相は、発表の場でこの人にはめずらしく辛そうでした。3000人の兵を派遣しているイタリアはこれで再び政府への撤退要求が確実に強まります。米軍に撃たれた無念の表情は 植毛、シワ取り美顔整形した顔が失礼ながら、かえって滑稽にみえました。

●外交問題に発展しない
ベルスコーニ首相としてはは真相の究明と、責任者の処罰にいつもより強い態度を示す必要があり、ローマの米大使を呼びつけた。が、これとて国内向けのジェスチュアが多分にあり、伊・米の外交問題に発展するようなことはない。

余談ですが、昨11月、ローマ外れの丘を歩いていたら米大使館があり、あたりにイタリア軍装甲車や機関銃の兵がポジションについていた。在京米大使館は門前を通るだけでも威圧感がある。日本の首相がじきじきに米大使を召還したことがあっただろうか。たまにやるとよいかもしれませんね。中・韓の大使など国民にうけますよ。

●検問所に突っ込む車はカーボンブとみなされる
検問所へ向かってスピードを落とさず走ってくる車は、自爆カーボンブと看做される。検問所の兵は銃撃阻止を躊躇しない。これはもう条件反射になっているのではないか。以前は米兵が警告するスピードダウンの仕草と言葉がわからず、車に乗っていたイラク市民、家族が誤射される事件が何度もありました。いまではイラク人に周知され、したがって猛スピードで検問所に向かう車はカーボンブとみなされる。イスラエルでもおなじです。

解放されたスグレーナさんと情報官二人が乗った車はスピードを落とさなかったため誤認されたといわれている。なぜ?情報官は通じているものと思っていただろう。どこかでコミュニケーションが途切れ、検問所の兵士まで伝えられていなかった、とまあ想像がつく。

●解放される反戦平和派の欧州記者たち
スグレーナさんはバグダッド大学付近で拉致され、一月足らずで解放されている。その前にも二人のイタリア人女性ワーカーが無事解放された事件があった。3人とも命乞いヴィデオで撤退を呼びかけているように、反乱軍に同情的な女性であることが共通だ。先の二人は解放後の言動が、解放デモに一所懸命だった国民や救助に苦労した政府・民間グループの心証を悪くした。

また、同じ記者でも米軍関係や、米が支援するアラビア語メディアのジャーナリストは拉致されたが最後、必ず無惨な結末になっている。救助されなかった犠牲者のほうがずっと多いんですよね。釈然としない。

●感動の情報官
死亡した情報官、シークレット・サービスのニコーラ・カリパリ氏は先の成功した拉致事件でも犯人と交渉にあたったヴェテランという。咄嗟にスグレーナさんを庇い盾となって銃弾をあび、米軍病院に緊急搬送されたがまにあわなかった。もう一人の情報官は肺がつぶれたようで重体。スグレーナさんは肩に入った破片を摘出する軽傷で済んだ。(了)
   



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