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ブッシュ2期めのアジェンダ(3)拡大中東地域への民主化
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〈 Wed, 09 Feb 2005 〉
●前回の年金改革について補足。
演説で触れているように「個人年金勘定」の先がけとなる「Thrift Savings Plan 節約積み立てプラン」という制度が連邦機関の公務員に実施されている。随意で預託金の一部を指定された5つの投資ファンドのどれかに入れて増やせという制度。これを民間企業の若者に広げようというのが今回の改革案だ。 体調を崩してG7を欠席したスノウ財務長官は8日、税制小委員会と上院予算委員会に出て社会保障改革案を説明し討論しています。戦後のベビーブームは日本の団塊の世代にかぎらず、欧米でも全く同じ現象があり、あと数年でだいたいそろって退職する。そのあとが少子化、これも先進国共通の深刻な現象。しかし「個人年金勘定」というアイデアに議員の反応は懐疑的で冷たい。 財政赤字はGDPの伸びで緩和されるが、年金はGDPより人口統計の問題であるだけに生産性とかシステムの改善ではおっつかない難問だ。だが,何かしなければ…… え〜、日本の予算委員会は政治家とカネで紛糾、アハハ、くだらん。 ●拡大中東地域への自由と民主主義 最前列中央、共和党側に座ったライス長官を目配せで紹介しながら『明朝、ライス国務長官はシャロン・イスラエル首相とアッバス・パレスチナ自治政府議長と会談するために中東へ出発する。……パレスチナの政治・経済・安全保障のため3億5000万ドルの支援を議会にお願いする。』ブッシュはアラファト亡き後アッバスが議長に当選したとき、『中東和平に持てる資本をすべて投入する』とロードマップ再開になみなみならぬヤル気をみせました。この支援金がそのてはじめ、ライス外交旅立ちへのご祝儀なのでした。 8日、エジプトの避暑地シャルム・エル・シェイク(以外に寒そう)、4年ぶりに開かれた首脳会談で停戦がまがりなりにも成立。まがりなりにもというのは肝心のハマスが停戦宣言に同調していない。ひとつ自爆があればこわれる停戦であるが、平和へのジャイアント・ステップだ。ライスはパリで喜びを『成功と決まったわけではないが、アメリカはハラを括ってヤルゾ』"Sucsess is not assurerd, but America is resolute" とコメントしている。(ガラの悪い和訳で失礼) ブッシュはイラク選挙で予想外の投票率、すなわち大成功に天にものぼる気分を味わった。イラク民主化への一歩を語るとき、外国人はしらず米国人は救われた気持ちになる。演説では控えめだが、北アフリカの西端モロッコから東はパキスタンまで拡大中東地域に自由と民主化をもたらすユメ(ブッシュの生き甲斐だよなもう)がはしばしに看て取れる。しぼむどころか深く静かに夢はブッシュの心に潜行しております。 サウジとエジプトパキスタンやヨルダンに穏便で民主化への努力を讃えるが、当事国は敏感に独裁非難を感じる。イランにたいしてはテロ支援と核疑惑でかなり厳しかった。しかし当面はEUに調停をまかせている関係で、巧妙に非難を避けている。『イラン国民に伝えたい。あなた方が自由のために立ち上がるなら、米国はともに立つ。』とはウマイ言い方ですがどうかな、わたしがイラン人なら『ップ』ですわ。いつも思うんですが、スピーチ原稿ができたら、関係国の人間に校閲してもらって、文化宗教慣習にそぐわない反撥されそうな言い方は訂正すべきなんですがね。 さて私感では、EUがハタミにウラン濃縮をあきらめさせる力はない。長引けばイスラエルが黙っていない。武装グループを派出するシリアと,ヒズボラ拠点のあるレバノンに強く出たが、ここはか弱く脅したって平気だからで、何度か拠点を叩いている。次はシリア侵攻って な邪推はあたらない。 追記:ライス長官がパリ政治学院で行ったスピーチは今後の米外交を知る、というより感得できる最良の資料です。半分ほどヴィデオで見たが、よりによって合間の拍手が見込めないいわば敵陣でのスピーチに、これほどの実在感を示した器量におどろく。質問への答えがまた堂々と優れている。(スピーチ全文は米国務省ワシントンファイルにあります。) http://usinfo.state.gov/usinfo/Archive/2005/Feb/08-939495.html |