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ブッシュ2期めのアジェンダ(2)軍事予算と年金
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〈 Tue, 08 Feb 2005 〉
●予算教書=緊縮にして通常軍事・国内安全保障費の増大
米大統領は例年2月最初の月曜日に予算教書を議会に提出します。アメリカの会計年度は10月はじめの9月末日切り、したがって7日発表された06年予算教書は05年10月1日から06年9月30日の政府案である。これを上下両院が審議して4月15日までに決議、ここから先は両院の歳出小委員会が13あり、そこで各分野の予算割当を10月に間に合うようにきめる。大筋こんな段取り。 発表された予算書は一般教書演説【So next week I will send you a budget that holds the growth of discretionary spending below inflation, 】 『来週提出する予算では裁量的経費の伸びを物価上昇率以下に抑える』のとおり緊縮財政ではあるが、予想物価上昇率より0.2%下回るだけでは実質マイナス予算といっても、どこが倹約だか。この予算にはイラク戦費が入っていないので、今年の赤字財政は過去最悪の4270億ドルに達する。わたしやっぱりブッシュお別れまでに赤字が半減するとは信じ難い。米の景気浮揚をアテにした予測を鵜呑みにできますか。 ただし、裁量的支出である補助金など150のバラマキ施策先をカット縮小するのは本当でした。小委員会の折衝で骨抜きにならないか、農業補助金など日本ならとても半減できない措置をやろうってんだからぜひとも注目。しかしそのカット分を国防費と国土安全保障費の増額にまわす・・・そういえばアメリカは丈夫で長持ちする新しい核兵器を開発するそうで、まだ「テロとの戦い」を拡大しなきゃならないのでしょうか、シックりせんのです。 ●年金改革「個人勘定」の危うさと魅力 演説でブーイングとも悪い事実を突きつけられたウメキともつかぬ声が議場にコダマした箇所の要旨:『現行制度は数十年前につくられたもの。半世紀前は労働者16人で1人の退職者を支えてきたが、いまでは3人で1人の年金生活者を養っている。そして数年のうちに労働者2人が1の年金受給者の面倒をみなければならない。毎年、労働人口が減少し、増え続ける退職者に増加する一方の高額年金を支払うハメになる。』 そして押しかぶせるように『13年後、2018年に年金支出が収入をうわまわる赤字となり、たとえば2017年には政府が二千億ドル注ぎ込んでなんとか持ちこたえても、2033年には三千億ドルが余分に必要。2018年、国の社会保障は破綻する。』 【--the only solutions would be drastically higher taxes, massive new borrowing, or sudden and severe cuts in Social Security benefits or other government programs.】 『解決策は思い切った増税、多額の政府借入金、受給額の大幅カットに至るだろう、あるいは他の政府案』。ブーイングが最後の『政府案』で総立ちの拍手。ウヘーそんな名案妙手があるんでしょうか、正直その後繰り広げられるブッシュの年金改革案 Personal ritirement accounts「個人年金勘定」はたいして受けなかった。共和党でも本心賛同している議員は少数だろう。 これからの若い人に年金支払額の1部(半分強)を個人の財テク口座にいれて増やそうというアイデア。セーフガードとして安心できる保守的な株や債券など投資先は政府がつくるガイドラインに従う。はげたかファンドやアコギな手数料をとる金融業界を政府が監視し、個人は貯まった額を子供の将来にまわしてもよいという。証券会社のセールスウーマンのようにスベリがよい。 そうやって増やした個人年金勘定は、本人がリタイアしたときの取り分になり、個人勘定にいれない年金支払額が現在退職している受給者に回る。さてと、アメリカ人は貯蓄しない国民ではなかったか。ま、北欧より熱心ですが、日本の比ではない。退職までの長い年月に、人間苦境もあれば火急の現金が要る事態に直面するやもしれぬ。借金のカタに取られて年金失うバカもたんといるだろう。 どうせやるなら、政府が肩代わりして財テクすりゃいいのに、そうしないのは危険がある証拠で責任逃れの方便ではないのか。財テクに失敗した日本の共済年金が続出したように、お堅くやっても減るときは減るのです。 と思う一方で、定年世代は『あ〜、年金で長期債を買えていたら、○○ならナンボ、XX買っときやx億だったのに……』と、後知恵めぐらせてせつないのである。政策決定者は老人が多い、だからひょっとすると実施されるかもね。 ブッシュはこの年金改革案について教書演説の翌日からグラフを持って2日間で5州を(共和党の地盤ばっかりなのがご愛嬌)説明してあるいた。たいそうご執心で、手遅れにならないうちに焼き栗を拾う意気込みはまこと素晴らしいといわねばなるまい。 |