安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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特恵を返せ!ロシア年金者デモ(2)
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〈 Tue, 25 Jan 2005 〉


●混乱
特恵優遇措置を廃止しますからしかじかの年金で工面してやってください。との新年金制度への移行は,現金の手持ちがない自治体があったり,算出法があやふやだったり、庶務がさぼっていたりして混乱した。あるバスの運転手が、今年から高齢者にも乗車賃を請求してツエでなぐられたほど,その逆上ブリたるや老体にムチうってでも街頭デモに加わったのでした。

プーチンは、エコノミスト誌の表現を借りれば<悪い側近に失望した良き皇帝>を演じ『政府・地方自治体は決めたとおりに年金支給を行っていない』。と通達の不徹底を断罪した。ゆくゆくは、ことしから実施される知事の中央任命制を正当化する好材料に利用できる。

●緊急対策で小康
抗議におそれをなして「特恵」措置を延長した自治体をプーチンが賞賛,他の地方も見習うよう奨励したため、それですむならと多くの自治体が特恵を復活し,ここ数日は小康を取り戻した。

ロシアではチェチェン、ベスラン,ユコス、ウクライナなど国をゆるがす由々しい問題があってもプーチンは国民を気にしないでよい。だが庶民の財布を疎かにすると大ゴトだ。基本年金を現行一ヶ月100ルーブルを近く240ルーブルに倍強増すると約束。微々たるものでもこれは第一弾という。基本年金だけしかない者は上乗せ支給があるのだろうか,1000円でひと月?いくらなんでもまさか・・

先週末、クドリン財務相は実施の不備を認めた上で900ルーブル(3500円)までアップする新計画を表明した。

●請求書のくる日が正念場
全国デモが2月12日に設定されているがそれには理由がある。退職者の不満は来月はじめ,いままで無料だった電気・ガス代の1月分請求書が配達されるころが衝撃のクライマックスになるからだ。政府はある程度の「特恵Uターン」政策で騒動を回避するでしょう。当面は石油のアガリを積み立てた「安定準備基金」を取り崩す方法が検討されている。汚職とムダ使いで財政を圧迫する「特恵」は早かれおそかれ廃止しなければならない旧制度である。達成まではなお曲折がある。 

今回の退職者高齢層による広範囲な抗議デモは2000年にプーチンが権力を握って以来はじめて目前にした出来事です。しかもプーチンの支持基盤は若年層より高齢層である。年金生活者4千万人の票が反旗を翻がえす意味は大きい。イワノフが「学生を徴兵猶予を認めない」国民皆兵制案を撤回したのも、ここで学生に一緒にデモられると厄介だから、プーチンが先手を打ったのです。

●だれのクビが飛ぶか?
さて、社会保障改革案をつくり実施にうつしたのは、クドリン財務相,ジュラボフ保健・社会開発相,グレフ経済貿易相の3人。みな改革推進小数リベラル派に属するがゆえにシロヴィキたちの(KGBや軍出身、治安部門を掌握するプーチンの母体)格好の餌食だが,3人ともプーチンが一本釣りして任命したデキる友人。過去すでに閣僚入れ替えを何度か行って,もうよいピンチヒッターがいない。シメシをつけるために一人は更迭するだろう。アレクセイ・クドリン財務省とみられている。

「トイレットペーパーを替えるように」閣僚を更迭するプーチンさんを熟知しているので,淡々とした様子。わたしが残念におもうのは、ヤブロコなど民主的野党や自由メディアを一掃し,いままた与党「統一ロシア党」の一角に残ったリベラルが崩され,民主政治がまた一歩後退したこと。8月に採決した改革案国会審議はたった24時間、最終改革案が示されたのは採決1時間前というプーチンの強権政治に比べ,日本が郵政民営化の周知にいく年月要したことか,長いから良いという訳ではないが,日本はいい国だなぁ。(了)

追記:月曜日ユーシェンコがプーチンに就任あいさつをすませた。会談に先んじて,プーチンは閣僚会議でウクライナ東部のロシア企業が制約を受けるか注意するよう指示を出している。両国の経済政策は会談で不一致に終わった。共同記者会見にあらわれた両者は,小泉・金正日につぐ硬い表情。おもしろくなりますね。
   



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