安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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シャロン「無制限軍事作戦」の意図
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〈 Mon, 17 Jan 2005 〉


昨日の続き、事態はより深刻になりました。
●軍事圧力はアッバス援護の変化球
先週木曜日の検問所自爆テロに対してシャロンは接触凍結の措置をとった。これは今週アブ・マーゼンがガザへ出向いて武装勢力3組織と話し合いをする余裕をあたえる、いわば変化球の助けと考えた。この解釈がけっしてマト外れではないのですが、不十分とみてテロ抑止への軍事決定をシャロンは選んだ。

日曜日、アッバスの煮え切らない態度に『テロ攻撃をストップさせる無制限軍事作戦』を国防大臣モーシェ・ヤーロンに命令。"The army and the security forces have been instructed to increase operational activity to stop terrorism and they will continue to do so without restrictions .
−いいか無制限だ−パレスチナ側が(テロ抑止に)指をあげないかぎり(なんでもありだ)。- I emphasize without restrictions - so long as the Palestinians don't lift a finger," he said. 

ギョっとする発言。だが、実行となると現実味が薄い。その少しまえにイスラエル空軍が武装派のアジト一カ所を空爆、例によって市民も巻き添えになった。木曜日の自爆テロに対する報復は土曜日の戦車レイドですんでいる………であるべき。したがって余分なお返しは先に殴った側に立場がかわるのがケンカの習わし。ガザからカッサム・ロケット砲弾があってもそれで死亡者がでる確率は低い。振りそそぐ状況にでもなれば無制限軍事行動が現実におこらないないとは言えないが、あっても抑制された限定攻撃になるはず。

●アッバスの失態と無力
こういう事態を招いた張本人はほかならぬアッバス自身で、武装勢力をテロの無いときは自由の戦士と持ち上げ、テロがあれば『やめろ』といわず『和平に益しない』とものわかりが良い。外部の目には歯がゆく、武装勢力に対するものぐさと映るのです。アッバスの母体ファタ派のテロにたいしては、飼い主に手を噛まれたようなもの。噛まれたまま叱れないご主人様を叱咤してもダメなんだな〜。

当然イスラエルは不満。アラファトへの不満と同じ理由と原因による不満が新大統領アブ・マーゼンに向けられている。アラファトとアブ・マーゼンの異なるところは後者が武装派ととにかく話し合いを持とうというところだけ。その話し合いがしかし成功しそうにないのである。

絶望的な話し合いに利するとすれば、武装派リーダーが軟化するようイスラエルが無制限軍事作戦の圧力をかけること。そう考えれば、シャロンは曲がりくねった方法でアッバスを援護しているように見えてくる。

すぐにでも和平交渉がはじまる期待ははずれたが、今月中にシャロンとアッバスの会談が開かれ、和平交渉へつなげていけると先読みしています。(了)
   



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