安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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イラク国民議会総選挙をうらなう(3)
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〈 Tue, 11 Jan 2005 〉


● 選挙の準備、進捗ぐあい
予定通り11月30日立候補届けをしめきり、12月15日選挙戦がはじまった。ファルージャを占拠したものの居残り狙撃手にてこずり、各地に攻撃が波及したため出足は悪い。選挙カーはもちろんビラも少なく、アフガニスタンのような熱気は表面的にはみられない。認知され登録された政党は120、それぞれ最少12人から最多275人を候補社にリストアップする。そのうち最低25%は女性と規定があり、なかなかどうして民主的なのです。

有権者名簿は治安悪く国連が人員派遣を節約したためけっきょく戸籍調査はできなかった。さいわい国連の「石油を食料に」計画の一環として作ったイラク配給制度名簿/選挙名簿を利用することにした、一般に閲覧し現在も修正を受けつけている。サッダムが国民の信任を受けた大統領を自負し、フセイン政権のイラクにも民主的選挙はあったとへりくつ述べる根拠がこれです。100%の得票率がなんで民主的選挙かアホラシ。独裁プーチンさんでも80%です。アラファトは70%止まりでした。

おもうにアフガニスタンは国家建設以来一度もなかった戸籍調査をよくやり遂げた。調査員が妨害され殺されたり2年近くかかって少し延びはしたが大統領選挙を果たしたもの。とまれ、イラク有権者名簿そのものはオーケー。つぎに政党の色合いをみよう。

●シーア政党
人口の6割を占める宗派で議会で過半数を占める。これはもう疑いない。宗教色の濃い「イスラム−ダワ党」IslamミDawa、ハキム師(暗殺されたハキム師の兄弟)のひきいる「イラク・イスラム革命評議会」SCIRI、この二つが大政党。ほかにアラウイ首相の属する「イラク国民合意」INA、返り咲きに挑戦するチャラビの「イラク国民会議」INCがあり、わたしの予想 は宗教色のないインテリ、技師の多いこちらの小政党が今回の選挙で躍進する、またそうあってほしと願う。

●クルドは自治制維持
人口の2割、クルド人は国連保護のもと自治制をしいてきた。それが成功して自治区ではテロが皆無。そのためここだけ復興支援がストップせず、道路も学校も立派なもんです。1992年以来バルザニ大統領の政治が安定しているので、現体制を維持したい。クルド議会115議席のうち「クルド民主党」PDKと「クルド愛国連合」YNK、が半々ずつでk100議席、残りをアッシリア人とキリスト教の党。30日の投票ではクルド地域でスンニ政党や、シーア政党を選ぶ者はいない。自治制を維持するこの構造はかわらない。クルド人は宗派的にはスンニであるがクルド語を話し、民族が異なる。 

●スンニのボイコット
さて、人口の2割を占めるスンニはフセインの母体「バース党」が解散し、政党を作れないまま残兵が徒党を組んで武装派集団に変貌した。有力と言われる「イラク・イスラム党」は選挙不参加をきめた。先に提出した候補者名簿は無効になったのか、選管に立候補と取り下げの申し出があったのか、そのへんがわからない。おそらく名前はあるだろう。バグダッドや『死のトライアングル』の外に住むスンニたちだってたくさんいるわけです。そうするとやはり身内に投票するでしょう。ボイコットは不完全燃焼におわる、とほぼ断定できる。

もうひとつ政党ではないがスンニ法学者の「イラク・ムスリム・ウラマー協会」が実体より重要視されている。宗教活動家嫌いのサッダムのころは協会メンバーがたった3人、名前だけ許されていた肩書きにすぎない。拉致反やテロ組織との仲介で羽振りがよくなり大きくなった団体が選挙のボイコットを呼びかけたところで、影響ありません。スンニ市民が投票に行かないとしたら、半分が反米凝り固まり、半分が親米分子に見られたくない、KYテロに遭う恐れからです。(つづく)
   



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