安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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イラク国民議会総選挙をうらなう(2)
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〈 Mon, 10 Jan 2005 〉


● 選挙実施はコケルか立つかのTipping Point
米英のイラク復興日程にそって、国連が決議したイラク議会選挙のデッドライン・2005年1月30日まであますところあと3週間になった。この期日を策定したころのテロは今から振り返るとかわいいものです。あの程度だったから、多国籍軍と国連は住民調査や選挙民登録など諸々の準備期間を考慮して「来年2月まで」と日取りしたのであろう。

イラク暫定政府へ主権委譲を果たした昨夏は、予定日の9月1日をヤマに武装派の攻撃が激しく危ぶまれたが、こっそり前倒してことなきを得た。しかし国民議会選挙は有権者1250万人が全国約6000箇所に設ける投票所に出向く。場所によっては長蛇の列が出来る。あぶなくってしょうがない。

大丈夫、安心して投票所にお出かけください、とは誰も保障してくれないが、それでもなお選挙は必ず行われる。理由は明白、選挙ができなければイラク政府が崩壊しスンニが軍事政権を画策、同盟軍が撤退し、米軍は呆然自失、とまあブッシュ/アラウィが最もおそれる事態を招くからです。

●治安維持は絶望的、ブッシュの弱音
武装派はパトロールする重量20トン余の装甲車を吹き飛ばす能力がある。対する米軍はモスル近郊の武装は隠れ家をGPS誘導ミサイルで空爆したつもりが民家を誤爆。これは8日、米大使館員がスンニ指導者との選挙参加をうながす会合の1時間前におこった事件です。バグダッド近郊では自爆攻撃に駆けつけた米兵がイラク警察官と市民数人を銃撃。誤認といえ、かくも米軍は浮き足立っているのである。そしてまたぞろ拉致事件が、西洋人、東洋人、シーア指導者など、おかまいなしに頻発するようになった。

ブッシュ大統領は報道陣との会見で7日はじめて「イラク18県のうち4県で選挙が混乱する恐れがある」とまえもってお断りするかのような弱音がでた。選挙をまえに3万人とか5万人規模を追加派兵、計15万の米軍とイラク治安部隊/警察が治安を・・・とファルージャ再攻撃の前は強気でしたがシボみましたな。でもそれでいいのです。ガムシャラでは困ります。現実を認めその範囲でやるべきことをやる理性的な判断が肝要。

●30日厳守、延期はない
ではすこし理性的になって選挙がらみの状況を見よう。常識をおさえておきます。
サッダム配下で政権を独り占めしていたスンニ派は少数なるが故に権力を失う選挙に抵抗。クルドは自治を目指して全部クルド派候補に投票する。スンニに抑圧されてきた多数派のシーアは政権に就く千載一遇のチャンス、議会選挙に運命を賭けています。延期などトンデモない。スンニ武装派に殺されても殺されても耐え忍び30日に夢を託すのです。

選挙準備の公務員が殺され逃げ出しても、補充され脅迫を受けながら勤しむ人がいる。イラクのシーア派がいかに抑圧されてきたか、ジョン・シンプソンの[The War Agaist Saddam]を読んでなるほどと思った。彼らは金輪際スンニに反逆しまい。 

ヤワル大統領や、スンニ政党であるイラク・イスラム党が国民議会選挙の延期を国連や、なぜかフランスまで出かけてシラクさんにお願いしているが、ムダなこってす。米、国連としては選挙をボイコットしているスンニ指導層や、スンニムスリム宗教者協会(SMCA)が延期と引き換えに期日を決めて選挙参加を約束するなら、その確率は殆どゼロだが、延期に応じるかもしれない。とはいえ約束が守られるか心もとないうえ、実際にはかなりの数のスンニ派市民が投票すると見られている。(まだまだ続く)
   



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