安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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誰がユガンスクofユコスを落札したか
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〈 Mon, 20 Dec 2004 〉


●競売に名乗りでたバイカルFG
バイカルファイナンスグループが競売参加を申し込んだのは3日前、委託金17億ドルを払っている。数日前、本命のガスプロムのほか3社が競売に参加する模様とロシア発のニュースがあったが、日曜日の会場に現れたのはガスプロムとバイカルFGのみ。

競売にふせられた[ユガンスクネフチガス]は、ユコスの売り上げ60%を占める生産拠点で、社名の最後がガスとなっているので誤解されやすいが、石油を採取している。生産量はインドネシアやカタールに匹敵するユコスオイル社の中核なのです。

競売は追徴課税275億ドルの取り立てが目的で、ひと月前はそれくらいの落札額をプーチン以下、競売を実行する[ロシア国有資産基金]は期待していたはずだ。10日ほどまえにインドをはじめて訪問し、兵器と石油輸出、IT技術輸入で成果をあげた。このときの議題に、バジパイ首相は返答を避けたが、ユガンスク競売にインド参加を歓迎する、というのがありました。プーチンの真意はわからないが、競売の公平とセリ上がりを望んでいたのはたしかです。

●競りをやめた本命ガスプロム
さて、伝えられる会場の模様はこうだ。競売が86億5千万ドルでスタート、ガスプロムの役員が本社に電話で相談するため数分席を立ち戻ったときには、バイカルFGが93億5千万をビッドしてた。ガスプロムは押し黙ったまま、この値でバイカルFGが落札。要するに国営ガスプロム社は会場を出たり入ったりしただけで、競売に参加したとは言い難い。 

この間、競売の説明も含めて10分足らずです。バイカルファイナンスグループとは何者ぞ?落札主は答えず姿を消し、ガスプロム、競売主体の国有財産基金のトップも知らないという。住所がモスクワ郊外のTver、ガスプロム関連の会社もおなじ町にあるところからガスプロムが後ろにいると推理するコメントがいまのところ一番多い。

●ファイトするユコス
ユコス社長のホドロフコフスキーが脱税容疑で逮捕されてから一年以上になる。まだ拘置所にはいったまま、もし有罪となれば10年の刑である。ロシア最大の企業に育て、ロシア一の富豪にのしあがったまではよかったが、野党支援や政治に首を突っ込んだためにプーチンにひねり潰されるハメになった。ユコスは半年もたないだろううと思われていたが、しかしあとを引き取った経営陣がなかなかよくやっています。

ロシアは90年代、慌ただしい入札で国営企業を民間に売却したが(そういえばこの競売も顰蹙もの)輸送パイプの敷設事業は国営のモノポリーにして統制管理している。ガスプロムはガスの輸送販売を専売する国営企業だが、なぜか赤字で手持ち資金はない。ロシアの銀行は貸し出し上限があって国内では都合できない。

米ヒューストン連邦裁判所がユコス社の訴えどおり破産プロテクトを認め、競売差し止め、外国金融参入禁止仮処分をしたことが予想外に功を奏したようだ。これでガスプロムはドイツ銀行やJPモーガンから予定していた融資が受けられず、先立つものが用意できなかった。融資が受けられなければ……政府のその筋と対応を話し合うでしょう。言い換えれば策略をめぐらした。

●ガスプロムの時間稼ぎ
作戦は「時間稼ぎ」。便宜会社に入札させて、いったん落札させるという方法。買値は14日以内に納めることになっているのでその間にガスプロムはお金を集めて買い戻す。あるいはバイカルFGが買値93億5千万ドルが納められなくて、ガスプロムに買い取られるというシナリオが流れている。ありそうなことだ。いづれロシア政府の手に落ちる。

ユコスは今後イギリスほかヨーロッパの法廷に競売の違法など法的なアクションを起こして対抗する構えである。ガスプロムは現在その4分の1の天然ガスをヨーロッパに輸出しており、このうえユコスのオイルを引き取っても売れなきゃどうにもならない。欧米から制裁を
うける懸念なきにしもあらずです。(了)
   



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