安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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なぜノルウェーはEUに加盟しないのか(3)
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〈 Mon, 13 Dec 2004 〉


●2度の国民投票で否決
ハナから混みいったはなしになりますが、経緯を整理しておきたい。EU(欧州連合)の起源は仏独主導の1958年、EEC(欧州経済共同体)6カ国に始まり、これに対抗してイギリスを筆頭にEFTA(欧州自由貿易連合)7カ国が結成された。ノルウエーはこのメンバーで、いまも非加盟国4国が継続して構成しています。

イギリスはEEC発足に加わりたかったのに、ドゴールが拒否権を発動して除け者にしたのです。ゴーリズムの真骨頂、第2次大戦でお世話さまさまになっておきながら、EECで主導権をとられるのを惧れたのでしょう。のち英政府の加盟申請をこんどは英国民が国民投票で否決したのはそのときの『腹いせ』じゃなかろうか。とまれイギリスは1973年ECに加盟してEFTA を脱退した。

ECがEUに移行する段階で、EFTA諸国と と単一経済圏を構築しようとEEAを新たに設けます。
ECは域内への市場アクセスなど経済分野の共同体ですが、さらに外交安全保障、各国バラバラな法律の調整まで踏み込んだのがEU。EFTA諸国とその拡大された分野を新たに規定するのがEEAとい条約です。EFTAはそのうち消滅するでしょう。

●EEA, 四つの自由は足かせつき
ノルウェーは72年の国民投票でEC加盟を否決、94年にもEU加盟を国民投票が否決した。加盟を推進した労働党政府は2度とも僅差で負けました。が、これより先、EEAには国会の承認をへて条約(マーストリヒ条約)に署名しています。EEAは四つの自由『商品、サービス、人間、資本の移動』がうたい文句になっている。

家内とEU国へ旅行すると、NO国籍の家内はパスポート審査の窓口がEU/EEAを通るので旅券の表紙を見せるだけで通過する(わたしはその他の国だから長い列に並ばにゃいかん)。そういった国境出入りの簡略さはあるが、労働市場、輸出入は個別に複雑な規則があり、うたい文句とは大違いなのです。しかもその規則たるや、EU本部がしょっちゅう改訂、新規追加を一方的に通達してくる。法律作成に参加できない立場では交渉の余地はない。従うほかない。通達がくるたびイライラが嵩じてきます。

●外交上手のスイス
スイスはEEAを批准していない。ふつうなら国会が採決する法案を直接民主主義の国スイスでは国民投票にかける。だから、政府が決めたって国民投票で覆ることがしばしばある。これじゃヤル気のある政治家が出ないのは当然です。スイスの首相はなんて名前?正解は[首相はいない]。ハハハ、小生はじめて知ったのでした。シャッポの大統領はいらっしゃるが首相の意思決定は官僚化した閣僚が合議で行う由。

そのかわり官僚が優秀で、各分野、各事項や各品目ごとにそれはそれは長い個別交渉を忍耐強く続けて、結局EEAより良い条件にしてしまった。スイスはEU規則のいやな条文には縛られなくてもよい。消費税15%以上とか労働時間の上限に適応しなくてもよい。匿名守秘の銀行は犯罪ありとされる口座の開示などオープンになりつつあるがバンキングシステムは安泰です。

●ノルウェーにくすぶる不満
ノルウェーは自分たちばかり損しているのではないか、しかもEU外のノルウェーがEEA協定のためEUに支払う年額が、EU加盟のデンマークが支払う額より多いのです。ならいっそ加盟した方が……と考えて打診したら、とんでもない加盟料を吹っかけられた。小国だからってバカにすんな!孤立しても主権を守ろう!そういう気になるものです。

こういったところが最近の世論調査で加盟反対派が圧倒的多数に変じたおもな原因か。ほかに、欧州憲法の成り行き、拡大25カ国の行くへも見極めたい。現在、主権を維持し景気後退もせずチャンとやっていけるではないか。それを羨むEU国民も少なくない。

来年は加盟の是非を問う国民投票が議論される。前回から10年たったのでそろそろ時期だから賛成「一途派」と「いっそのこと」派が議題にしようとするが、差し迫った理由はない。もし来年国民投票が行われるなら否決されるトレンドです。(了)

まだ言い残したこと、安保軍事面での協力体制、NOとSWISSの物価高、NOとSWISSらしき外の国を悪者に扱うEUの愛国教育などものたらない想いですが、一応これにてピリオド。
   



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