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なぜノルウェーはEUに加盟しないのか(2)
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〈 Fri, 10 Dec 2004 〉
● 石油産業の収益
ノルウェーの石油ガス輸出がサウジ、ロシアに次ぐ世界第3位とワタシがいうと、ふつう怪訝な顔をされる。これは国内消費が少ないので生産の約46%を輸出にまわせるからです。同じように掘り出しているイギリス側の北海石油は少し輸出していたが、近年次第に先細り今年は輸入国に転落するとか。とはいえBPやSHELLなどの英国系企業が石油高で利益をあげている。 オフショー石油というのは開発とリグ建設や海底パイプ施設に莫大な投資をつぎ込むが、いったん生産が軌道にのるとやることは大部分コンピューター制御です。GDPの約20%を稼ぎだすにもかかわらず、石油生産に従事する労働者は人口のわずか2%。とても効率がよいのです。昨年の統計ではGDP一人当たり41842ドル。エっと驚かない人はニブイ。GDP/capitaが4万ドルを超す国なんてありゃしない。日本は3万ドル台に乗ったが、英仏独は3万ドルに達しない。中国は1000ドルでしょ。 NOの財政黒字は今年やく150億ドル。これとは別に石油輸出による収入は大部分「石油基金」にプールされる。その額9千億ドル。人口が450万人ですから、赤ちゃんから老人まで国民みんなで山分けすると〜、ちょうど20万ドルずつですな。今ドル安です目減り激しいといえ2千万円だ。5人家族なら1億円だ。 「石油基金」はエクイティー、債券等に投資運用しているが、時々投資先が環境破企業だったり、兵器産業と関係あったりして物議をかもしている。しかしこういう良い条件では景気が過熱し、金利上昇、給与上昇、Nクローネ高を招いて国際競争力が弱まります。3年ほど前からその傾向が顕著になり、金利を小刻みに6度下げた結果、景気は持ち直した。現在は欧州平均の1.75%、来年春には2%を見込んでおこう。 以上、石油の恩恵を手放したくない、他人に取られたくない心理を理解してもらうために書きました。逆に石油収入が質実剛健な山と海の民をスポイルし、反社会的行動、モラル低下、学力低下が目に余ると嘆く良識派も多いことを付け加えておきます。 ●2番目は農業 伝統水産業については将来希望がもてないのでEU加盟反対より政府の救済策に関心が高い。また養殖産業はEUへの輸出をスムースにするため加盟に賛成派がふえている。加盟の障害は は農業牧畜です。スイスとおなじく山国のNOは耕作地が殆どない。この面で、SW,DM,は見渡す限りの平野があり大規模農業・酪農が可能、加盟してもEUの農産物と太刀打ちできるのです。ところがNOときたら岩山のほんのわずかの傾斜地を耕し、羊や乳牛を飼う家族農家をみれば一目瞭然です。小麦畑は東NOにあることはある程度。昔から干しタラを売って小麦をドイツやいギリスから買って暮らしてきたのです。 だからSWは農地の無い役立たずのNOを気前よく『割譲』し、独立を許したのでしょう。百年前は手放した岩だらけの国で、漁業が大産業になり、海運業、地形を生かした水力発電ができるとは予想できなかった。ましてや海に石油が埋蔵されているなど誰が知ろう。そういうわけでNOはスイスと同じく手厚い農業保護政策をおこなっています。加盟すればひとたまりもないだろう。しかもEUの規定にしたがえば、いまのように十分な補助政策ができなくなる。農業人口は5%に満たなくとも、農業はやはり国の基本。自然環境保護も大事だが、文化と歴史アイデンティティーに関わる土の営みを潰す訳にはいかない……とフカーク思いやられるのです。零細農家の救済策にEUと妥協点を見いだせれば2番目の農業問題は解決できる。 次回はいよいよ本題。ノルウェーはEUに加盟こそしていないが、実質的にはそうでもない。矛盾するようですがいろいろな協定があるのです。EFTA(欧州自由貿易連合)、EEA(欧州経済領域)、NATO、欧州安全保障防衛政策(ESDP)、選挙監視に活躍している欧州安全保障協力機構(OSCE)、シェンゲン協定、ダブリン協定とかあるわけですが、要であるEEAについて、これが不平等なんだな。次回をお楽しみに(続く) |