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なぜノルウェーはEUに加盟しないのか(1)
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〈 Thu, 09 Dec 2004 〉
●ヨーロッパの変わりものたち
西ヨーロッパにありながらEUに加盟していない国が四つある。ノルウェー、アイスランド、スイス、リヒテンシュタインです。ミニ国家リヒテンシュタインは非武装中立、いつもスイスと一緒に行動するので特別注目するには及ばない。他にも加盟していない超ミニ独立国、アンドラとバチカンがあります。それぞれフランスとイタリアが代行し、実質加盟扱いされているので論議しなくてもよい。それではノルウェー、アイスランド、スイスの3国にしぼって共通する点は何でしょう。 いずれも山国、雪がある。……なんてのはおもしろいがEUに加盟するしないの理由にはなりません。3国は欧州各国のなかでトップレベルの所得を享受する国という共通項がある。一人当たりのGDPは英仏よりはるかに高い。しかしながら、ではスウェーデンやデンマーク、ベルギー、ルクセンブルグなど所得水準が高くてもは加盟しているではないか。したがって所得の高さも理由にはならない。もっとも低所得の東欧圏が当EU加盟を望むのは理由のあること。失うものは何もないのだから。 日本から見ると、スイスは永世中立だから『入らなくてよい』、アイスランドはアイルランドと区別のつかない紳士がいたりしてよく知られていない。ノルウエーは『遅れている』と見られている。もう全部マチガイ。3国は国民投票(スイスは直接民主主義)によって加盟を拒否、いまも抵抗しているというのが実情です。 ●北欧は4カ国、それとも5カ国? 「北欧4カ国の旅」……旅行会社の宣伝がそもそも誤解のもとになっている。毎年持ち回りで開かれる北欧首脳会議は5カ国、DM-デンマーク、NO-ノルウェー、SW-スウェーデン、FIN-フインランド、ICL-アイスランドが正しい。そのうちなぜDM, SW, FINの3国がEUへ入り、NO,ICEの2国が背をむけるのか。この2国は世界航空路線の中継地ではなく、欧州外からはそこへ出向かなければ空路立ち寄ることもない。イメージとしては「どこかとおい北の国、幻想の国」なのである。だが、現実的に地形と位置環境を見るとそれに付随する資源がカギであることがわかる。 ICEは大陸から離れた島、NOはスカンジナビア半島の大西洋岸を独占している。すなわちヨーロッパの漁業海域の大半をこの2国が占めている。ICEは水産品の輸出で成り立っている国、NOも水産物のほとんどを輸出している。もしEUに加盟すれば200海里の経済水域を開け渡さなければ。ICEにとって漁業資源をEUと分ち合うのは自殺行為である。将来、北極海の魚資源が枯渇するときがきたら・・だがそうなればEU側が加盟申請を拒否するだろう。どっちにしろアイスランドはEUに加盟しない。明快です。 NO漁業は最近ダメニなりました。海洋資源保護に関する関係各国との調整や漁獲ワク規制はたいへん厳しく、エコロジーの乱れを防ぐ捕鯨も含めて申し分ない海洋資源政策であるが、監視が行き届かない。NO漁船も外国船も密魚や売れない小魚をこっそり海上で棄てるため、魚資源の減少は深刻である。北NOの伝統漁業と加工工場は休業に追い込まれ、いま大きな政治社会問題になっている。他方、養殖サケマスの輸出が大きい。ただし養殖ファームは湾ややフィヨルドを利用するので経済水域は魚餌用の雑魚を考えるだけでよく、漁業関係者の加盟反対は20年前のように強烈ではなくなった。 ●一番の理由は石油 NOは北海/北極海/バレンツ海に石油ガス資源を有する堂々世界第3位の石油輸出国である。人口450万、日本ならそれくらいの地方都市はいくつもある。そんな小国の財政黒字たるや、大声出しませんが貯まる一方なのです。お隣のSWには石油がない。資源と国はいつの世にも不公平でありました。ゆえに戦争がおこると……これは今日「ノーベル平和賞」受賞のためオスロ入りしたワンガリ・マータイさんの持論でした。(長く続きそうです。ではまた) |