安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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獄中立候補、アッバス議長に挑戦するバルグーティ

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〈 Thu, 02 Dec 2004 〉


●変心、締め切り1時間前に届けで
獄中のマルワン・バルグーティが立候補候、締め切りめ切り1時間前に奥さんが登録委託金35万円を持って届けでました。日常生活のなかでわれわれもふつうに経験することですが、あることをお願いにあがってよい返事に安心していると、後日「やっぱりやめます」なんて電話があったりする。そういう苦々しい経験はたまにあるくらいだが、パレスチナでは常態だ。和平交渉決裂の歴史、自爆テロ自粛・停戦を約束してもすぐ元の木阿弥です。マルワン・バルグーティもアラファトのように平気で前言を撤回し心変わりするようだ。

出馬しないことでアッバス側と同意し、さらにファタとその武闘派アルアクサ殉教旅団のリーダーとして両組織にアッバス支持を宣言させておきながら、土壇場で変心したのはなぜか、あるいは初めからそのつもりだったのか。イスラエル法廷によりテロ幇助罪5件で終身刑にある者が、大統領にあたるPA議長に選出されるなら立候補しないのがおかしい。今思えば出馬しないでくれと頼むアッバス側がおこがましいのだった。

●もしバルグーティが勝てば
実際バルグーティがアッバスを破って当選する可能性はすくなからずある。西側メディアは楽観的だが、大衆をあまく見てはいけない。ヨン様現象のパレスイチナ版「マルワン様現象」の兆候がある。シャロンはアッバス/クレイ組みと和平交渉再開の新時代に期待していたが、イスラエル人殺害で服役中の犯罪者と交渉するなんて論外でしょう。とはいえ、バルグーティが当選すればイスラエルに相当なプレッシャーがかかる。EUのソラナあたりがウルサイだろう。出獄措置がとられ、いづれ和平交渉の相手に認めざるをえなくなる・・そんな予感がするのですが。

●カリスマ
現在自治政府を仕切るアッバスPLO議長、クレイ首相、シャース外相など古い穏健派はアラファトとともにチュニジアに亡命していた、いわゆるチュニジア人とよばれるグループ。彼らが亡命中にパレスチナでは若者たちが各地でインティファーダ(市民蜂起)をおこしてイスラエルとぶと戦った。その若者指導者にマルワン・バルグーティ(Marwan Barghouti)がいた。イスラエルに拘束され、91年のオスロ合意で釈放された。彼が有名になったのは2000年の第2次インティファーダから。市民行進の先頭にたってイスラエルと衝突、アジ演説で民衆の人気をえた。2002年にいくつかのテロ関与で再逮捕され以来服役の身であるが、それがまたカリスマを醸成したようだ。

したがって草の根パレスチナ人民は、市民共闘しなかった汚職膨れのアラファト側近を信用しない。いまのところハマスは選挙をボイコット、ファタはアッバス支持、アルアクサは急な変心に困惑している状況ですが、たいして動員力はない。選挙の占いは和平交渉に望みを託す良識派とマルワンさま派のどちらが多いかにかかっている。カリスマ追従者には政策も理性もへったくれもないのがコワイ。 

ところでバルグーティは自爆テロのアルアクサにリーダーに祭り上げられたため、過激な人物に思われがちですが、イスラエル民間人へのテロは認めないけっこうアラファト批判もあり、獄中からアルアクサを説得して一方的停戦させたこともある。アラビア語と英語の他に服役中にヘブライ語も覚え、イスラエル左派に友人が多い。まだ45才、柔軟です。(了)
   



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