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二つに割れたウクライナ
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〈 Fri, 26 Nov 2004 〉
●キエフ独立広場の群衆
ウクライナ大統領選挙が日曜日、首都キエフの独立広場に集結する群衆が4日目の夜になって減るどころか、10万人にふくれあがった。雪の日も、日が落ちるとすぐ零下に冷え込む外気に立ち続ける群衆、若い女の子たちはきれいに着膨れして気勢をあげている。なにがこの人たちを行動に駆り立てるのか、不正選挙への抗議と親西欧路線のユシチェンコ前首相支持だけでは説明できない熱気がある。民が動き国が動くモーメント。さいわいプラハの春、天安門事件のように強権に弾圧される兆候はないが、国を2分する対立が激しくなる危険を孕んでいる。 ユシチェンコ派はオレンジ組、親ロ派のヤヌコビッチ派は青組でそれぞれ旗色が鮮明である。青組も広場近くに仮説テントを建て、バスや列車で若者をキエフに送り込んでいる。1日30ドルで募集しているが、烏合の集まりで統制にかける。 ●西か東か欧州かロシアか、二つのウクライナ ウクライナは文化宗教言語歴史的に見て大まかに西と東にわけられる。首都キエフを含む西側がユシチェンコの地盤で反ロシア感情が強い。なにしろ第2次大戦ではロシア側につくのが嫌でナチに加わったナショナリストがいたほどなのです。東側出身のヤヌコビッチはウクライナ語を勉強中。ま、ソヴィエト時代に産業政治基盤がかたまったので現在はロシア語が優勢である。 ウクライナはロシアの穀物倉庫といわれるほど豊かな大地、面積だってフランスよりでっかい。豊富な石炭をもとにソ連は工業地帯をつくり、黒海にロシア艦隊を配置、オデッサは国際貿易港湾都市(横浜の姉妹都市)、チェルノブリに爆発事故をおこした原発を作り、ソチはいまでもロシア高官のリゾート地である。いまは黒海の石油開発ブームである。戦略的にも経済的にも価値あるもウクライナにプーチンはぜひとも影響力をのこしたい。 ●プーチンは静観しない すでにバルト3国を失い、グルジヤに逃げられ、ベラルーシは西に目が向いている。ここでウクライナまで欧州につくようになってはプーチンさんの威信がつぶれるではないか。最近プーチンはEU拡大に神経質になっているが、さもありなんです。 さて5日め、さらに混乱するだろうか。ウクライナ最高裁は中央選管集計、ヤヌコビッチ49 %、ユシチェンコ46%の公布を差し止め、来週野党の言い分を審査するという。ようわからんが混乱収支にはなりませんわな。プーチンは『街頭ではなく法廷で決める問題』とし、他国の内政干渉に警告した。これはパウエルやEU首脳の不正選挙を認めない発言にたいする、返答である。しかしEU,NATOなど国際オブザーバー約550人を派遣しているヨーロッパは、不正を見過ごす訳にいきません。 事態はたいへん流動的で、警察が野党側についたり、国営メディアが独立広場の様子を報道するようになった。広場では演説ばかりでなくロックコンサートが加わり、そのうち過激に走るグループが出るだろう。すでにオレンジ組対青組の小競り合いが起こっている。 ●不思議なこと その1:仲介役のひとりにワレサがウクライナ政府とユシチェンコの両方から頼まれてやってきた。ポーランドおよびオーストリアと親戚関係にあるウクライナだから話しやすいのだろう。だがワレサなんて男の出る幕は世の中どこにもないんですがね。 その2:颯爽と首相に就任した嘗てのハンサムなユシチェンコの顔が………何があったのか血の気の無い白いザラめ肌にかわっている。CNNでも取り上げていたが、真相はわからない。毒をもられた?酒?面妖だな。(了) |