安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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バチカン嫌い

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〈 Wed, 24 Nov 2004 〉


●老法皇の国は敬老料金がない
ミニ・ステイツ、バチカンを歩きながら考えました。地下鉄おりたところから順序としてまずバチカン博物館へ、高い壁にそって歩く。バチカンは都市国家だからこの法皇庁をとりまくこの壁は市壁と言うべきか。銃砲口がちゃんとある。入場料は130ユーロ。ミケランジェロの有名な天井画、シスチナ礼拝堂はこの博物館の中にある。せっかくのチャンスだから130ユーロは安い。だが敬老料金がないとはどうしたことか。よぼよぼの法皇を崇めておきながら、老善男善女に拝観割引の恩恵を与えないとは納得できんのです。

●ローマには公衆トイレがない
法皇は早く引退されるがよろしい。常々バチカンを疑問に思うわたしのモヤモヤが早くも頭を曇らせるのでした。ローマの不便なところはトイレがないこと。公衆トイレはどこにもない。地下鉄駅にもないほど徹底している。トイレがあるのはカフェーか、入場料を払った施設にかぎるのです。で、博物館にもあるが一カ所だけだ。館内のあちこちに造っておけば便利なのに一カ所なんだ。コロセウムにもトイレバラックが一カ所あるだけだから女性が列をなして・・・

バチカンのトイレは意外によく、すこし機嫌をなおしました。しかし11月というのにスゴイ人出でシーズン盛りは身動きとれないんじゃないか。地図の壁画ギャラリーを立ち止まらず行きすぎる。地図描きのわたしとしては先達に申し訳ないがこれだけ多量にあれば見る気にならん。ラファエロの部屋もグルリと見回して、いや〜うまい、先へいそごう。だんだん超満員の人の動きが遅くなってきた。やっとシスチナ礼拝堂へ、ひときわ暗い堂の天井一面にミケランジェロがギッシリあった。眼鏡をとってもかけてもよく見えない。家内のゆるい老眼を借りると創世記の場面、天地創造がバッチリ見えました。イヤーうまい。ダイナミック、動的でいきいきしているところが、他の宗教画作家のおよばぬところ。天才っていいな。

●宗教法人と課税フリー
さてこういう絢爛豪華な建物を作り、フレスコ画を注文したのはキリスト教を統括する教皇だった。教皇の傘下を嫌って新教を採用した国がおおくなったが、いまでもカトリックはバチカンを頂点とする縦型社会である。世界すべてのカトリック信者の頂点にたつのがローマ法皇というわけだ。だからバチカンは宗教法人の究極の望みを達成した機関といえる。

日本の神社仏閣は嘗て、拝観料に税を導入しようとした国税庁に猛然と反抗して潰したことがある。こういうときだけライバル宗教も手をつなぎ団結する。お布施を申告してはバチがあたるらしい。バチカンともなれば世界中からの集金力は見当つかないほど、創価学会など数にはいらない額だろう。バチカンは税金逃れの便宜上、独立国家たることをイタリアに認めさせた。そのラテラノ条約が成立したのは戦後、日独とともにイタリアの立場が弱かったためである。

●聖ピエトロ聖堂
使徒ペテロが葬られた丘、モンテ・バチカンに349年教会が建てられたのが現在のピエトロ(ペテロ)聖堂であるが、なぜかくも巨大で(一万人は入るだろう)絢爛華美に豪奢でなければならないのか、荘厳といえば聞こえがよいが、しばらく眺めていると権勢を誇示し信者を幻惑してさらに資金をあつめるための贅沢なウツワに矮小する瞬間がある。ピエトロ寺院は拝観料ナシ。完全に観光化され、それではならじとチャペルをひとつ、縄を張って祈りのためにもうけてあったがいかにも繕った敬虔が気に障る。(了)

余談.バチカンはEUに加盟していないがバチカン発行のユ−ロを使う。人口1000人未満で広さが建造物群と庭だけ、飛び地をいれても皇居の半分も無い。産業はゼロで輸出品がないため輸入品ばっかりで暮らすが、それでも国家財政は黒字。もちろん観光収入だけではない。
   



Pnorama Box制作委員会

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