安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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大量処刑されたイラクの新兵さん

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〈 Mon, 25 Oct 2004 〉


●まるごしの隊列
イラン国境近く、砂漠の中にあるイラク国軍の訓練基地で無事教練過程をおえた新兵さんたち40人が、つかの間の休暇のために故郷に帰るミニバス3台に分乗して基地を出た。全員私服で武器を携行していなかった。これ以上のソフトターゲットはまずないだろう。そして待ち伏せにあい、37人それぞれ後頭部を打ち抜かれて処刑された。12人が焼けただれたバスの中でみつかったという。

拉致した人質のひとり二人三人ではない。カーボンブや、迫撃砲で無差別殺害するのともちがう40人の【処刑】である。 来年一月のイラク総選挙が近づくなか、反乱側の逼迫した
テロ行動は常人の想像力を超える。このような大量処刑がもっとエスカレートするのか、米軍は選挙までに治安を確保できるのか、危ぶむ声が増してきた。わたしの予想もくるいつつある。とりあえず、この一件から何がわかるか綴ってみる。

●イラク側の装備拡充が急務
警察官や治安部隊への応募兵の列にカーボンブやロケット砲が炸裂する事態が、2度3度と絶え間なく繰り返されるのに対し、米軍はなんら防御策をとっていない。応募の行列はやすやすと攻撃されない場所と警護が必要だが、イラク側に任せきりにしてきた。そのイラク警察や治安部隊は装甲車すら殆どない貧弱な装備である。イラク側治安関係者の死亡は数千人いるだろう。

丸腰の新兵さんをバスに乗せてスンニ地帯を通るとは常識では考えられない、イラク軍にその余裕がないとも考えにくい。おもうに訓練基地のキャプテンである米将校が親身になってイラク人、イラク兵を心にかけていない。いかにイラク人一般を軽視しているか、キャンプの責任者が新兵の帰省隊列に無関心であったこの一件であきらかだ。

●イラク治安組織の内部諜報者
帰省バスが何時に出発するか、どこを通るか、武器を携行していない事などがテログループに筒抜けである。待ち伏せのグループはかなりの人数で組織化された部隊のようだ。チェックポイントを偽装して新兵のミニバス隊列をストップさせてから行動にうつっている。反乱テロ組織の視点では、イラクの警察や治安部隊に職を求める米軍の協力者は裏切り者として粛正されなければならない。

●理解されない民主主義
サッダム政権にあって、権力を独り占めにしたいスンニは旧政権崩壊後、自分たちは崩壊の運命にありすべての権力と特典を失うと思い込んでいる。少数派の権利が守られる民主的政権の成立に加担すれば、特権階級だった一部を除いて大半のスンニがうしなうものはない。だが、そのことがイラク人につたわらない。とはいえ、スンニ穏健派の指導者は結局選挙に立候補するだろうと、わたしは懲りずに期待しています。(了)
   



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