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ムンク盗難その後
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〈 Wed, 15 Sep 2004 〉
●手がかりなし
ムンクの美術館の2大有名傑作【叫び】と【マドンナ】が強奪されたのは8月22日、あれから一ヶ月になる。捜査の進み具合はというとそれが手がかりまったくなし。警察はただちにオスロのブラックリスト聞き込み調査えおおこない、エエ感触ありそうなことをマスコミが流していたが、その後サッパリだ。 簡単に盗みの事実経過を記すと: ▲ 8月22日午前11時10分、覆面二人組が展示室に押し入り、ピストルを持ったひとりが警備員を床に押しつけもう一人が壁から2点をはぎ取る。この間3分、外に待たせてあった車=アウディのワゴンで疾走。 ▲ 額の一部が遠くない道路脇に捨てられているのを発見。犯人が車のマドから捨てたもよう。午後2時57分,疾走に使われた車がシンセン(美術館から北へ約1.5km)で発見。内部は粉末消化器で吹き付けられていた。 犯人が使った車は1年前に行方不明になったものだが、持ち主は盗難届を出していない。マカ不思議ではあるが、持ち主と犯人の接点はないそうだ。警察は車から犯人のDNAの痕跡を検査したが見つからない。指紋はない。現在、ミリずつヴァキュームで吸い込み、ヒフ片でもなんでも何らかの生体的痕跡を詳細検査していて、その結果待ちである。なにか見つかればオドロキ、警察は悲観的だ。 盗難があった直後に隣のスウェーデンとデンマークに知らせて国境警備を厳重にした。といってもキャンバスを丸めて隠せばわからないだろう。1時間後にはフランス、リョンのインターポール本部をを通じて世界の警察にファックスが送られた。いまのところインターポールあら音沙汰なしだ。ニュースが地球を回っているので犯人は始末できず、ほとぼりが冷めるまで数年間は動かないとおもわれる。コラム【ムンクの叫び】で予想したようにオクラ入りの可能性がおおきい。 ●ムンク効果 ニュースになった翌日からムンク美術館の入館者が増えて、今年の入館者は最高を記録するんじゃないかな。肝心の作品が存在しないのに人がいつもより多くやってくる。盗まれて一躍有名になったムンクとムンク美術館が人々の関心を促した……といえば聞こえがよいが、 野次馬、付和雷同。小生もそう、生きてる人間の本質だ。 ムンク美術館の売店とネットショップでは、盗難作品をあしらったTシャツ、コップ、カフスボタン、原寸コピーの売れ行きがいいんですと。オスロのさる画廊では額入り複製【盗品セット】の2点セットを1995クローネ+24%消費税(約4万円)で販売して話題になっている。ムンク出版社も盗難2点の複製を企業向けに電話販売してヒットした。 ニューズウイーク誌によれば【叫び】の国際価格は7500万ドル。これはしかしムンク美術館が売りに出せる品物ではない。不躾に評するなら、換金できない品物をもっていたって宝のもちぐされです。盗まれたおかげで美術館が繁盛するならそれもいいではないか。実際【叫び】の連作は多く【マドンナ】もムンクは数枚描いている。かけがえのないオリジナル、是が非でもというほどでもない。エドヴァルド・ムンクが生きていたら歯牙にもかけないだろう。(了) |