安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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ベスラン人質、情けない対テロ態勢

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〈 Sat, 04 Sep 2004 〉


死者が200人も出る惨劇をだれが予想しただろう。特殊部隊が突入したとしてもこれほどの被害者を出さずにすんだはずだ。状況の推移でシナリオのないまま唐突に銃撃戦から校内爆発に至ったため、悲惨な幕引きになってしまった。

なにが引き金になったか、とにかく学校占拠の日に死亡した遺体の引き取り交渉が妥結し、そのトラックが校内に入り遺体搬入のときに、銃撃がはじまった。児童拉致犯人が医療班に化けた兵士を撃ったとか、この機に逃げようとした犯人を偽装兵が撃ったなどはっきりしないが、撃ち合いを機に犯人側が体育館内で2発立て続けに爆発させた。多数の犠牲者が出たのは爆発で燃え盛る屋根が子供たちの上に落ちたため。

犯人たちは、児童、母親、男(殆どが教師)のグループに分け、全体の70パーセントにあたる子供たちを体育館に集めてかなり酷い扱いをしたようだ。水も食べ物も与えず二晩、身動きすらままならぬ状態で、統制のため裸同然にしていた。チェチェンのテロリストならふつうそこまでしないのだが………。救出された少年の証言ではオシッコを飲んだり、花を食べた子がいたというから、ウーム強い子がいるもんだ。

●情けない対テロ態勢
不可解なことがある。プーチンロシアはほんとうにテロ対策をとっているのか、どさくさの現場映像から見ると政府側兵士・警察の統一がまるでとれていない。特殊部隊の迷彩服や、雑多な服装の兵士や警察、さらに武器を携さえ平服で白いタオルを腕に巻いているのは市民のボランティア、白いコート着た医療班など雑多な連中がが一緒になって動き回り、武器を持たない男たちまでくっついて右往左往している。どこに指揮系統があるのやら。またけが人を運ぶのは市民の車でつぎつぎと、たまにやったくる赤十字をつけた軍の搬送車は中がカラッポで応急処置ができる器具がみあたらない。日本自衛隊は格段にまさるが、もって他山の石とすべしですね。

4日になってロシア緊急事態省が、モスクワからベスランの各病院へ医療器具と医薬品を送る飛行機2台を飛びたたせた。小児科医や看護人、移動性の集中治療ユニット6台が含まれている。ドロナワ式を絵にかいたような杜撰さである。地方の施設はソ連が崩壊したときのまま、ロシアの一般市民が受ける医療レベルは驚くほど低い。

子供の命を最優先に、武力行使はしないと宣うたプーチンは、事件がどうあれ落着したにもかかわらず黙したまま、たいていの国では首相/大統領がメディアに出っぱなしで事件をコメントしなければ国民に突き上げられる。プーチンはベスランを視察してから改まった声明を出すかもしれない。性急な報復措置は控えるよう願いたい。

5年前、プーチンはエリツィンにかわって一気に勝負をつけようと、チェチェン討伐に容赦ない猛爆を加え、モスクワのチェチェン人迫害を煽った。その結果、プーチンの5年間はチェチェン独立過激派の度重なるテロに一貫して無力である。ベスランの国道を東に行けば当時廃墟と化したチェチェニアの首都グロスニ、行き過ぎた民族迫害の犠牲になった町がある。

●法則=けが人は死者の4倍
人質の数約350人と公式発表されたが、実は1200人。地元の人が1000人以上校内にいるはずだというのにクレムリンはウソをついていた。病院に担ぎ込まれたけが人が600人とインターファックスが伝えたとき、すかさず死者は200人と割り出した当地の解説者がいた。テロ事件では死者の4倍けが人が出るという統計があるらしい。なるほどしばらくして外電が死者約200人と伝えました。最新情報では負傷者700人以上、したがって死者は200人を超える。(了)
   



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