安達正興のハード@コラム
Masaoki Adachi/安達正興


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フィリピンの裏切りとお家事情

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〈 Wed, 21 Jul 2004 〉



タンカーや貨物船乗組員でおなじみのフィリピン人出稼ぎ労働者は、世界に800万人もいる。アラブの金持ち国には特に多く、危険なイラクですら4千人が雑多な仕事についているが、主な雇い主は軍関係だ。母国に仕事がないから海外に職とチャンスを求めて脱出するお国の事情を考えると、この出稼ぎ組はフィリピンの政情を安定にしている有り難い要因なのです。アロヨ大統領としてはおろそかに出来ない。
アロヨ大統領が武装犯人の要求に応じて、駐留部隊撤退と人質アンヘロ・デラクルスさんを交換したのは、国内事情による政治的配慮。人権とかテロとの戦い、同盟軍への配慮、国際信義、といった高尚なハナシではなくてお国の【人情噺】。つまり国をあげて一喜一憂、熱狂パーソナリテイーになった人質を救い出せぇ。。国家的高揚、国民的お祭りになりました。似たような事が日本人拉致家族にも言える。タマちゃん人気も心理的に同じシンドロームだろう。
Angelo de l a Cruz というスターもどきの名前に加えて8人の子沢山単身赴任で長距離トラックドライバーとくれば、人気がでるわ。連日のTV報道、家族が近隣諸国で待機していやがうえにも盛り上がる。これを人気落ち目のアロヨが利用しない手はない。5月の大統領選は40%の得票で辛うじて再選された。しかも駐留兵士はかたちばかりの51人、脱イラクの移動は簡単だ。
『私は後悔していない』とTV声明を出したアロヨさん、そりゃそうでしょう、しばらく支持率あがります。が、喜んでばかりいられない。人質犯と交渉仲介した部族長アルドレイミは人道的配慮で身代金はいっさいないと胸を張るが、ウソ。ここはしらばっくれるのが浮き世の義理ですから。フィリピンゲリラが活性化するのは目に見えている。アチェ独立派だけではない、現に新人民軍は政府軍兵士二人を人質にとって停戦を要求している。これまでは、フィリピン共産ゲリラが人質の首をはねようが【女宰相】はテロに屈せず、国民もローカル事件に関心がうすかったがこれからは無視できなくなるだろう。
●と、まあここまでかの国を慮って書いてきましたが、一般的にコメントすればアロヨ決定には絶対承服しかねる。テロリストの要求に安易に屈したフィリピン決定は唾棄すべき愚挙。がっかりなんてもんじゃない。イラク移行政府へのウラギリですよ。日本赤軍の要求に応じた日本政府は日本の国内問題でおさまるが、フィリピンの屈服は国際モラルに禍を及ぼす。また過去、韓国、ブルガリア、エジプト、トルコ、アメリカ殺害された人質に涙をのんだ国は苦く悔しい。ザルカウィ系の【唯一神教聖戦団】がさっそく自衛隊撤退とテロ予告をインターネットに乗せましたね。感想はいかがですアロヨさん?(了)



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