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ニック・バーグと平敦盛
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〈 Thu, 13 May 2004 〉
「平家物語」一の谷の合戦で、熊谷次郎直実が平家の船に逃げる若武者 (平敦盛 )にいざや勝負と呼びかける。するとけなげに浜を引っ返して応じるんですな。難なく組み伏せてみればこれが薄化粧をした少年。「我が子小次郎が齢ほどにて、十六七ばかりなるが、容顔まことに美麗」とても殺すに忍びないのですが、味方・義経の兵がうしろに駈けてきて助けようもない。少年も殺せという。で、泣き泣き首を掻き切ります。「あはれ、弓矢取る身ほど、口惜しかりけるものはなし。武芸の家に生まれずば、何とてかかる憂き目をば見るべき、情けなうも討ちたてまつるものかな」。(わかりやすい英訳では:モNothing is so bitter as to be born into military family! Were I not a warrior, I should not have such sorrow! What a cruel act this is!モ)。そう嘆いて、後に熊谷直実は出家する。
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米民間人ニック・バーグの掻き首ほどやりきれない見せ物はない。なぜか上記、敦盛の一章を想い出された。悲しい戦いの矛盾をシンボリックに昇華した説話にはヒューマニティーが埋まっている。対極にあるのがネットで見せた冷血殺伐のヴィデオである。
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●アラブの反応
12日のアルジャジーラ紙上“Arabs react to berg decapitation”にエジプト、サウジ、パレスチナ、イラクなど各地の声を伝えている。最も過激な意見:『すべてのアメリカ人はこのビデオを見て思い知るがよい。一人だけでは済むとおもってるのか?』(シリアのタクシードライバー) |
野蛮、イスラムに反するとして拒否する側と、報復は当然、思い知ったかと肯定する立場が半々にわかれている。半数のアラブ人が『いい気味だ』と考えているとしたら、単に反米が曾てないほど増している ……それだけではないだろう。宗教文化に優劣はない。これは真理であり、優劣を比較するわけではないが、イスラム圏には部族や家族の濃いつながりに比し、汎ヒューマニティーが薄いようにおもう。(了)
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Pnorama Box制作委員会 |