安達正興のハード@コラム

Masaoki Adachi/安達正興


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ノルウェーからクジラ肉 輸入まじか (その1)

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〈 Thu, 07 Mar 2002 〉

いよいよ日本にノルウェーのクジラが5月にも輸入解禁になる。といっても量は微々たるもの。100トンを越えない量に押さえるのでどこのスーパーにも出回るほどではない。ねだんも安くならないので、今迄どおりクジラ肉の好きな人にしか関係ないか。輸入されるのはミンククジラの赤みだけである。
関西ではおでんに欠かせない背中の皮下脂「コロ」や、腹部の「ウネス」は輸入されない。80年代には少し輸入されていたが、最近のはどうもPCB蓄積が問題視されているようで、ノルウェーのある環境団体が 皮下脂輸出は殺人にひとしい と反対していた。まあ、揚げて脂を抜いた乾燥コロ(イリカス)ならPCBも抜けるのではないかな、希望的観測。どっちにしろミンククジラは小型で、あぶら層がうすく5〜6cm、繊維質にとぼしいので残念ながらコリコリしたスポンジ状にならない。「尾のみ」は体長5メートル以上の大型クジラでないと、赤みと脂みが半々のしもふりが得られない。ミンククジラの「尾のみは」ほんの少し糸状の脂がとおっているだけだ。
どうです詳しいでしょう。筆者は自分でで乾コロ作りに挑戦したことがあり、失敗してよくわかったのだ。また尾のみは毎年20キロ仕入れて冷凍してある。せっせと刺身で食しているから詳しいのだ。
ノルウェー人はコロ、ウネス、尾のみを食べない。魚屋.スーパーには赤みしか売っていない。なぜと聞かれても食文化の違いとしか答えようがないのだが赤みしか食わない。だから「尾のみ」は北ノルウェーのクジラ業者に注文して冷凍船で送ってもらわないと手に入らない。その最低量が20キロ入りカートンなのである。
本論に戻ろう。クジラの輸入解禁!これは画期的なことではないか。海洋資源の正しい利用、グリーンピースの感情的なエコテロリストを排し、IWC(国際捕鯨委員会)とワシントン条約に、やっと日本は正しく力強く、非は非として主張した。個人的にも長く望んできたので非常にうれしい。
まず、ノルウェーだけどうして鯨を商業捕鯨としてとっているのか。そこからはじめます。IWCの商業捕鯨全面禁止モラトリアムを1982年決定。それまでに国連の環境会議が「商業捕鯨10年間禁止」という取り決めがあり、ノルウェーは世界で初めて環境省を儲けた環境先進国の名に恥じず、捕鯨を停止した。ところが88年に4,200頭が自然死してしまった。あきらかに増え過ぎでえさが足らなくなったためだ。
IWCは、本来クジラと関係のある国々がメンバーだったが、環境団体、過激なグリーンピースの運動で加盟国が倍近くになってしまい、会議は感情的な捕鯨反対に終始して科学的な議論ができない状態がつづいた。クジラは知能の高いほ乳類、人間に近い動物、殺し方が残酷、わざわざクジラを食べなくても他に肉があるなど、理性を失ったエコロジーとは無縁の誹謗にすぎない。各地から集まったグリンピースのデモが会議を取り囲み、日本代表に暴力を奮うありさまだ。かようなエコテロリストの横暴がまかり通った時代があった。全体で40か国ほど、半数はいわば反対票に借り出された小国である。
IWCの下部組織に科学委員会があり、科学的な資源調査、どの種が何頭いるか、増減の傾向など精細に調べて、捕獲の量的ワク・操業域を進言する。もちろん日本は水産庁の資源調査をもとに主張する。ところがIWC会議では科学委員会の意見がいつも無視され、正当な議論ができない状態が何年もつづいた。ノルウェー漁業の中心であるタラが食べる小魚を、ミンククジラが食べてしまうため生態系に狂いが生じ、放置できない。1993年ノルウェーは資源持続可能なワク内で商業捕鯨を再開した。世界、特にアメリカから水産物輸入反対運動や世界中の非難をを受けた。このあたりがノルウェーの国際政治に長けた立派な態度というか、読みがふかい。非難やノルウェー品ボイコットは当然予想される。しかしそれは感情に起因するもので一過性である、と冷静なヨミがあった。事実一年もしないうちに潮の引くように、反ノルウェーキャンペーンは下火になり、2年後にはウソのように消えてしまった。クジラの故事に学んだフランスが、後にムルロワ島での核実験を決行する。ワインなどフランス製品ボイコットが長続きしないとわかっていたからである。
理不尽な非難に小国ノルウェーがどう対応したか、次回につづきます。

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Pnorama Box制作委員会

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