安達正興のハード@コラム

Masaoki Adachi/安達正興


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燃える列車事故 エジプトの失政

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〈 Sun, 24 Feb 2002 〉

事故の概要:2月20日夕、カイロを出発、ナイル河に沿ってピラミッドで有名なルクソー行き11両編成の列車が、出発後まもなく火災発生。
窓から吹き込む乾いた熱風にあおられて火は7両に燃え広がる。列車は火炎をあげてそのまま7キロ走ってカイロから70キロの町、アル・アヤト駅に到着。
焦げついた車両から運びだされた焼死体は多くが性別年令など確認不能なまで炭状になっていた。
飛び降りて死亡した者をふくめ、373人の犠牲者。エジプト鉄道史上最大の事故である。
例年のメッカ巡礼とおなじイスラム教の宗教行事ハッジお祝いのため、5日間の休みに帰省する人々が乗っていた。日本でいえばお正月やお盆の帰省列車である。しかし、日本の鉄道とは安全面で雲泥の差がある:
○ 火災報知機がない。自動消火センがない。したがって運転手は後続車両が劫火に包まれていることを知らないまま7キロ走った。
○ 電気が消えたため、暗やみがパニックを助長する。
○ 窓には鉄棒が差し渡してあり、外に飛び降りるのが困難。
○ 非常口、非常窓がない。またヨーロッパ鉄道にある緊急用の斧もない。
○ 速度がおそく鉄道のたびは時間がかかるので荷物や、携帯コンロと食材や弁当、小さな家畜まで持ち込む。
○ 乗客の定員が今回は2倍。満員で身動きできないほどだから逃げられない。乗降口にむかって乗客が折り重なり踏みつけあうスタンピードがおこった。
運輸大臣がただちに、乗客が使った携帯コンロが火災の原因と推量を断定的に発言。この大臣と国鉄総裁が辞任。ムバラク大統領は責任者を厳罰に処すと言明した。しかるに被害者への賠償措置はどうなるのか、安全対策をどう改善するのか、どのニュースも伝えていない。
事故調査委員会の公式発表はまだだが、火災原因は乗客のコンロではなく、電気回路のショートによるとリーク報道されている。
98年に駅の停止コンクリートを越えて市場に飛び込み、51人の犠牲者を出した98年の事故はショッキングな映像で覚えている。原因は列車の上に乗っていた乗客(?)がブレーキを作動する空圧パイプを曲げたためとされている。
ムバラクは偉大なエジプトの国際的地位と発言力に自信満々である。故サダトもそうだった。大国から称賛されるのは、地域の安定勢力を維持するための方便と気づかない。国内のインフラ、人民の生活は旧態依然としたまま、民主主義プロセスを口にするのはご法度である。
事故のほんとうの責任は「失政」。犠牲者と、エジプト市民に哀悼と同情を禁じえない。
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Pnorama Box制作委員会

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